若者はソウルにある大学を好む
韓国ではソウル首都圏に人口の半分以上が集中しています。このため、首都圏では一般化しているサービスでも、地方には行き渡っていないものも少なくありません。この国のサービス格差の現状を取材してみました。(シリーズ3/5)
◇若者が集まるのはソウル
韓国統計庁の先月19日の発表をみる。
青年層(15~34歳)の首都圏居住比率は2019年基準で52.7%だ。全年齢の首都圏居住比率(50%)を上回る。この20年間、159万人の青年層が地方から首都圏に流入したという統計もある。青年層を中心に人口の首都圏移動は加速している。
青年層の首都圏集中は複合的な要因による。
まず、教育問題だ。
若者はソウルにある大学を好む。この傾向は日増しに強まっている。産業研究院が、韓国教育開発院の統計を分析した資料によると、全国の大学に占める首都圏大学の入学者の割合は、学齢人口の減少にも関わらず、2013年の42%から2020年には43.5%に増えた。
ソウルの大学を好むのは就職の問題と関係がある。
採用試験では、名前や性別、年齢、学歴といった情報を取り除く「ブラインド採用」が、確かに増えた。だが、就職市場には地方の大学出身者にとって「見えない壁」が存在する。青年人材の多くが首都圏に偏在するため、質の高い雇用もおのずと、首都圏に集中する。
資産総額10兆ウォン以上の40の相互出資制限企業集団(いわゆる財閥)の所属会社1742社のうち、首都圏に本社を置いているのは1290社(74.1%)。良質の教育、良質の雇用が、若者らの首都圏集中を引き起こす。この現象は少子化問題にまでつながっている。
こうした背景から、ユン・ソンニョル(尹錫悦)次期大統領の政権引き継ぎ委員会も「均衡発展」を主要テーマに掲げている。引き継ぎ委のアン・チョルス(安哲秀)委員長は先月14日、「若者が、いい職場が集中する首都圏に移り、地方は少子高齢化が深刻化する。首都圏は住宅価格が高いため、結婚できる状況にならず、ここでも少子化が深刻化している」と危機感を募らせている。
◇「不便=不幸」生活サービス格差
地方で苦労して生活の基盤を固めた青年たちが、今度は生活サービスの深刻な格差で二重苦を経験する。新型コロナウイルスの感染拡大で増えた「未明配送」などの非対面サービスからも、地方の若者らは相対的に疎外されている。
韓国全土の84%でクーパンなどの「未明配送」が利用できない、というMONEYTODAYの調査結果は既に紹介した。
教保証券のチョン・ソヨン研究員は「オンライン転換の加速化に伴い、2020年に2兆5000億ウォン規模だった未明配送市場は、2023年に11兆9000億ウォンまで成長するだろう」と見越す。だが、拡大した市場の恩恵が、地方にニーズを満足させるわけではない。
企業側の立場からみれば、物流などの生活サービスを全面的に、地方に拡大するのは経営の負担となっている。物流業界の関係者はこうもらす。
「経費を考えれば、住民密集地域を中心にサービスをするしかない。これが現実だ」
業界を主導するクーパンのほかに、新規投資の余力がないという事情もある。クーパンがサービス地域を拡大するために投じた資金は、2019年から現在まで実に約2兆ウォンに上る。
首都圏や一部の大都市を除く地域は、生活サービスの恩恵から遠のく一方だ。はなはだしくは、島しょ部や山間地、一部の奥地は、同じ物流サービスを利用しても、追加費用を強いられる。
済州島の場合も、クーパンを除く物流サービスは、追加費用を請求される。「済州島で年間発生する物流経費のうち、追加配送料だけを見ても年間1000億ウォン規模」。済州研究院のハン・スンチョル研究委員はこう指摘する。そのうえで次のように提言する。
「追加配送料に関する基準がない。この状況で求められるのは、政府が積極的に実態を調査すること。そして改善案を用意したり、物流センターを拡充したりする必要がある」
(つづく)
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