クーポン? 地方では使い物にならない
韓国ではソウル首都圏に人口の半分以上が集中しています。このため、首都圏では一般化しているサービスでも、地方には行き渡っていないものも少なくありません。この国のサービス格差の現状を取材してみました。(シリーズ2/5)
◇全人口の26.2%、国土の83.9%は疎外
韓国ネット通販大手「クーパン」の「未明配送」可能地域――これは、見方によっては、企業の「合理的な決定」とみることができる。
行政安全省の昨年末の住民登録人口統計を基に分析すれば、クーパンの「未明配送」可能地域の人口は3810万2233人(73.8%)となる。一方、面積でみれば、該当地域は全体の16.1%に過ぎない(韓国国土情報公社の「都市計画現況」による)。
それだけ効率が良い――ということもできる。ただ、見方を変えれば、全人口の26.2%、国土面積の83.9%は疎外されていることになる。それでもクーパンは「規模の経済」を達成し、サービス地域を拡大している。
別の業者はどうか。
韓国食材通販「マーケットカーリー」の「未明配送」サービス「セッピョル配送」は、首都圏と忠清圏の一部、大邱、釜山、蔚山でのみ事業が展開されている。マーケットカーリー関係者は「新配送サービス地域を拡大する具体的な計画はない」と述べた。
韓国百貨店大手「新世界」グループのオンライン統合モールブランド「SSGドットコム」の「未明配送」も、首都圏と忠清圏の一部地域でのみ利用できる。
新型コロナウイルスの感染拡大とあいまって、非対面サービスが拡大している。この点で、生活サービスの地域間格差はさらに大きな不便をもたらす。一部先進国では、人口構造の変化により、地域によって生鮮食料品が手に入らない「食品砂漠」(Food Desert)の現象も起きている。
韓国では首都圏集中で、生活サービス全体の格差が広がっているのだ。
産業研究院のチェ・ジュンソク研究委員は次のように指摘する。
「若者が首都圏や大都市に移動し続け、地方の中小都市が縮小している。若者の立場では、生活サービスや文化などを享受できないため、中小都市を避ける以外にない」
地域別の生活サービスの格差は、他の領域でも見られる。
最近、スタートアップを中心に、ホームクリーニングや非対面ランドリーサービス、才能共有プラットフォームなど、さまざまな革新サービスが登場している。だが、それらもサービス地域も、首都圏や地方の一部の大都市に限られている。
スターバックスも1660店舗のうち首都圏だけで1022店舗(61.6%)も集中している。有名フランチャイズのコーヒークーポンをプレゼントしてもらっても、使えるところが多くない――。
国土研究院のチャ・ミスク先任研究委員はこう提言する。
「急激な経済成長プロセスを経て、『不便』が、すなわち『不幸』だという社会認識だ。このため、生活サービスが劣悪な地方に住むのを避けようとする傾向がある。未明配送など新しい生活サービスの需要に対応するために、民間企業と協力・支援を通じた脆弱地域に対するサービス伝達を模索する必要がある」
◇生活サービスの格差に注目すべき理由
ソウルのある青年会社員の暮らしを追ってみよう。
彼は地方の高校を卒業し、ソウルの大学に通った。激しい競争を勝ち抜き、ソウルで仕事も得た。毎日忙しく生きる生活の中で、家事は手ごわい宿題だ。
掃除はアプリで申し込めば「マネジャー」と呼ばれるヘルパーが解決してくれる。洗濯物も同様に、モバイルで要請すれば、玄関前で収集・配送まで引き受けてくれる。費用は侮れないが、「自分のための投資」だと思っている。翌朝、自宅で簡単に済ませる食事は「未明配送」を利用するつもりだ。
……首都圏、特にソウルに住む若者には珍しくないシーンだ。
クーパンのロケット配送など、翌日の宅配サービスは一般化し、未明配送市場も拡大している。ホームクリーニング、非対面洗濯サービスは、費用が高いため好き嫌いが分かれるが、「選択の機会」が与えられているのは確かだ。
だが、地方の人々には「選択の機会」さえない。
「未明配送」のような物流サービスだけではない。スタートアップの革新的な生活サービスは、首都圏や広域市中心に運営されている。生活サービスの格差は、地方の若者の定住環境をさらに厳しくする要因の一つとなっている。
(つづく)
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