現場ルポ
ただ、音楽業界では、今回受賞を逃したことが「失敗」を意味するのではない、というコンセンサスが形成されている。
新型コロナウイルス感染拡大で対面公演やテレビショー出演といった活発な海外活動が難しかった時期に、BTSはグローバル戦略を展開した。「ヒットソング」セオリーに沿った「Butter」や、グローバルロックスター、コールドプレイ(Coldplay)とコラボした「My Universe」などを繰り出し、影響力を拡大させた。その戦略が奏功して、ビルボードやAMAでの栄誉につながったからだ。
音楽評論家のチョン・ミンジェ氏はこんな見方を示した。
「グラミー賞とは、いくら足を踏み入れたくても、それができない場だ。そこに2年連続、割って入ったこと自体、意味がある。次は、グラミー賞のテイストに合う作品を出せば、いつでも受賞できる」
別の見方もある。
そんな「Butter」でさえ、グラミー賞候補曲となった、という評価だ。裏返せば、それだけBTSとK-POPの地位が高くなったということだ。
グラミー賞はそもそも、バックストリート・ボーイのような、米国を代表するアイドルボーイズバンドの商業音楽に一度も賞を出したことがない。だがBTSは授賞式に単独パフォーマーとして舞台に立ち、「Butter」を披露してスタンディングオベーションを受けている。グラミー賞と米ポピュラー音楽界がBTSの実力を認めているというわけだ。
チョン氏はK-POPの近未来を次のように展望する。
「BTSだけではない。TWICEが米国ツアーを成功裏に終え、Stray Kidsが『ビルボード200』で1位になるなど、K-POPが影響力を拡大している。BTSがグラミー賞まで獲ることになれば、英米のポピュラー音楽から影響を受けて形成されたK-POPが、本場で認められたことになる、という点で大きな業績になる」
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