「分身」がお金を稼いでくれる
広告モデルやアナウンサー、銀行員、アイドル――。「人間固有の領域」と思われていた分野で、人工知能(AI)技術により誕生した仮想人間が縦横無尽に活動しています。「彼ら」が切り開こうとしている世界にどのような未来が広がっているのか考えてみます。(シリーズ2/計8回)
現在活動中の仮想人間広告モデル「ロージー」は、実は人工知能(AI)技術ではなく、コンピューターグラフィックス(CG)の作業で誕生しているのだ。
実際、人を対象に映像を撮影した後、CGの作業を通じて顔だけ3D(3次元)モデリング(立体感を出すこと)をした。それぞれのポイントを動かして希望する表情を作ることができる。だが、そこでは莫大な作業量を伴う。全身を3Dモデリングしないのもこのためだ。
広告モデルだけに、服を何度も着替えさせるが、これをすべてCGにするのは不可能に近い。質感やしわ、照明などをCGで一つ一つ表現するより、人を撮影した後に顔だけ置き替える方が時間や費用の面で効率的だ。
ユーチューバー「ルイ」と11人からなるガールズグループ「Eternity(エタニティ)」にはAI技術が適用された。人を撮影した後、顔だけ置き替えるという点でロージーと似ているが、そのあと使用するのは、AIが人の顔のデータを学習して架空の顔を作り出す技術だ。踊りや歌、演技などは人が実演する。
ロージーやルイ、Eternityは広告やインスタグラム、ユーチューブなどのメディア領域に適している。多くの動きやパフォーマンスが要求される動的な分野であり、文化・芸術的な付加価値の高いものだからだ。
ただ「見せること」が中心であり、相談事や苦情の解決など、相互にやり取りすることは難しい。新しいコンテンツを作ろうとするたびに、人を撮影し、CGまたはAI技術で顔を作り出す作業をしなければならない。
AI仮想人間開発企業「マインズラボ(MINDs Lab)」(京畿道城南)の仮想人間M1は、体の動きがない代わりに「音声認識―問題解決」など目的志向型の対話に特化している。一度、人を撮影しておけば、再撮影をしなくても済む。
同社のチェ・ホンソプ代表はその優位性を次のように語る。
「対話を理解して答える。その際、自然な口の形で表現する。この技術はB2Bビジネス(Business to Business=企業間取引)での利用や、ROI(投資利益率)の側面ではるかに価値がある。アナウンサー、相談員、講師、博物館キュレーター(美術専門職)、図書館司書など拡張範囲が非常に広い」
実際、M1は新韓銀行のAI銀行員としても活躍している。また、アナウンサーのパク・チョルミン氏、ミン・ギョンス氏、チョン・ソラ氏の場合、M1で仮想人間をつくり、販売している。各企業は、マインズラボが開設した「AIヒューマンストア」で仮想人間を購入でき、広報用の映像やモデルとして活用できるようになっている。アナウンサーからみれば「分身」がお金を稼いでくれるというわけだ。
チェ代表は仮想人間の存在意義を次のように表現している。
「人間には、人間だけができるような、高度な知性と創意性が必要な仕事に従事してもらう。労働時間を短くするための存在が、われわれの追求する仮想人間だ。より賢い仮想人間をつくり、反復的な仕事を代行する専門職業集団にしていく」
(つづく)