もう一人の自分を作る
広告モデルやアナウンサー、銀行員、アイドル――。「人間固有の領域」と思われていた分野で、人工知能(AI)技術により誕生した仮想人間が縦横無尽に活動しています。「彼ら」が切り開こうとしている世界にどのような未来が広がっているのか考えてみます。(シリーズ1/計8回)
「全南(チョンナム、全羅南道)東部地域はおおむね晴れていますが、時折、雲が多くなるでしょう」。麗水(ヨス)MBCのお天気コーナーで気象キャスターのユ・スンミンが口を動かして声を出し、明日の天気を伝えた。ユ・スンミンは仮想人間として製作された気象キャスターだ。
京畿道(キョンギド)城南(ソンナム)のテクノバレーにあるAI仮想人間開発企業「マインズラボ(MINDs Lab)」。同社が公開した仮想人間M1の製作過程は、複雑そうに見えて、実は単純なものだった。
まず、仮想人間にしたい実在の人物を動画で撮る。さまざまな表情で、数多くの文章を読んでいる場面が必要という。それがあればあるだけ、仮想人間もより自然な表現ができるようになる。
撮影を終えた動画は、フレーム別に分けて数個のイメージファイルにする。顔の部分だけを別途抽出した後、口のあたりを消し、仮想の口の形を元の部分と差し替える。その後、繰り返しAIに学習させ、仮想の口の形が実際の口の形と一致するように形成する。
その後、音声によって仮想の口の形が発音通りに動くように合わせる。 よく学習させれば、テキストだけで仮想人間の口を動かすことができるようになる。 TTS(テキスト音声合成)技術により、文章を入れれば音声と共に口が動くというわけだ。
人よりも人のような魅力ある「幻影」を作り、有名芸能人に劣らない収益を上げる存在――それが仮想人間だ。現在、活動している広告モデル「ロージー」やユーチューバー「ルイ」、11人からなるガールズグループ「Eternity(エタニティ)」、マインズラボの「M1」はすべて「仮想人間」と呼ばれる。ただ、使われている技術は、それぞれ異なっている。
(つづく)