副首相兼企画財政相の候補
韓国のユン・ソンニョル(尹錫悦)次期政権の経済チームの陣容が、引き継ぎ委員会と秘書室の人選で明らかになりました。ユン次期大統領が選択する「経済キーマン」のラインナップを予想してみます。(シリーズ1/3)
質問は約70個。それぞれに○×形式で回答させる――。入学試験ではない。韓国のユン・ソンニョル(尹錫悦)次期大統領が政権引き継ぎ委員会のメンバーに選ぶ際、人物評価のため、提出させる資料だ。質問は、過去の行動から財産に関するもの。人脈ではなく能力・道徳性――ユン氏はこの方針に基づき、こうした細かい検証作業を経て、人材の選抜を進めているという。
「テスト」に合格した者が、政権引き継ぎ委員会のメンバーに選ばれている。
ユン氏は、政権引き継ぎ委の発足後間もなく、経済チームの陣容を披露した。中でも注目されたのは、同委員会の経済チームで重責を担うことになった2人だ。
1人は引き継ぎ委企画調整分科会委員で「国民の力」のチュ・ギョンホ(秋慶鎬)議員。もう1人は引き継ぎ委経済1分科会幹事で、企画財政省第1次官だったチェ・サンモク(崔相穆)氏。2人は既に、新政権の初代副首相兼企画財政相の候補として取りざたされている。
両者は企画財政省で公職生活の大半を送った正統的な元官僚。行政考試(日本の国家公務員総合職試験)の期数で考えた場合、チュ議員(25回)がチェ氏(29回)より先輩だ。
◇チュ・ギョンホ(秋慶鎬)氏
チュ議員は金融委員会副委員長、企画財政省第1次官、国務調整室長などを務め、第20、21代国会議員として活躍するなど、行政・立法経験を積んできた。「国民の力」院内首席副代表として、大統領レースのさなかに、ユン氏とイ・ジュンソク(李俊錫)党代表の和解を導くなど、選挙戦の勝利に大きく寄与したと評価を受けている。
財政経済省と企画財政省在職当時から、金融・マクロ経済政策を広く扱ってきた。ソウル大法学部でユン氏の3年後輩であること以外、直接的な縁がない。その点で、ユン氏の典型的な「能力中心人事」の事例に挙げられる。
◇チェ・サンモク(崔相穆)氏
政権引き継ぎ委員会で重責を担う官僚出身者のうち、最も目を引くのは、引き継ぎ委経済1分科会幹事のチェ・サンモク氏だ。ユン次期大統領が、大統領選への挑戦にあたり、事実上初めて迎え入れた。
チェ氏はソウル大法学部を首席で卒業した。同期のほとんどが司法試験を受けるなかで、行政考試を受けて合格した。ソウル大法学部の首席卒業生が行政官を選択するのは異例のことで、当時は話題になったりもした。
公職生活を始めて以来、「天才官僚」「エリート官僚」という修飾語が付きまとう。企画財政省の後輩は「判断が正確で速いことで有名だった」と話した。
チェ氏はソウル大法学部82学番(1982年入学の意味)だが、同学科の先輩・後輩という点を除けば、ユン氏とは直接的な縁がない。ナ・ギョンウォン(羅卿瑗)元「国民の力」議員、チョ・ヘジン「国民の力」議員、ウォン・ヒリョン(元喜龍)引き継ぎ委企画委員長らと法学部で同期だ。79学番のユン氏とは3年差だ。
チェ氏は1990年代初頭、外国為替管理法を30年ぶりに改正するのに大きな役割を果たすなど、事務官時代から頭角を現わした。財政経済省証券制度課長、金融政策課長時代には資本市場統合法(資本市場と金融投資業に関する法律)を制定し、グローバルな金融危機対応システムを樹立した。いわゆる「スター官僚」が経験することで有名な金融委公的資金管理委員会事務局長時代には、ウリ金融持株の民営化を主導した。パク・クネ(朴槿恵)政権で大統領府経済金融秘書官を務めた後、企画財政省第1次官を務めた。
企画財政省関係者からはこんな評判が聞こえてくる。
「マクロ経済・金融分野で主要政策ラインを経た正統官僚だ」
「該博な知識、専門的識見を備え、業務処理もきれいで先輩が好む後輩」
「後輩が尊敬する先輩としても知られている」
企画財政省職員が選んだ「なりたい上司」――チェ氏は数回、これに選ばれている。
(つづく)
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