
米エヌビディアのジェンスン・フアン最高経営責任者(CEO)。最近、情報技術(IT)業界と証券街を騒がせている人物だ。トレードマークの黒い革ジャンを着て、率直な人柄で大衆と交流する姿は、人間的な好感も呼んでいる。
フアン氏の関連検索語の一つに「龍山電子商街」がある。1990年代から2000年代にかけて、ソウルの龍山電子商街を回り、GPUなどコンピューター部品を売っていた逸話があるためだ。
フアン氏の足で稼ぐ営業は、韓国のネットカフェ文化の普及と重なり、エヌビディアの初期成長をけん引した。そして他国の商街を歩き回っていた人物は、いつの間にか時価総額5兆ドルを超える世界的ビッグテックのトップになった。
今年、台湾で開かれた「GTC台北」で、フアン氏は人工知能(AI)が導く技術生態系の明るい未来を強調した。生産性向上や雇用創出など、AIが開くバラ色の青写真を示した。
だが、台湾IT産業の出発点だったPC部品市場には逆風が吹いている。フアン氏が生み出したAI革命が、皮肉にもフアン氏を育てた市場から変え始めているわけだ。
4日、台湾で「COMPUTEX 2026」を取材中に訪れた台湾の「龍山電子商街」ともいえる光華商場の風景が、それを物語っていた。
COMPUTEX会場を覆ったAI熱風は、光華商場には届いていなかった。企業がAI部品の生産に集中するなか、商人たちの主力商品であるPC部品の確保が難しくなっているためだ。
台北光華商場発展協会関係者は「大手メーカーがAI部品だけに集中しているため、店頭に出回る商品は過去に確保しておいた在庫部品が大半だ」と話した。
こうした光華商場の風景は、AIが新たな市場を生み出す一方で、既存市場の秩序を冷徹に再編している事実も示している。
技術変革は必然的に光と影を同時にもたらす。AIブームでエヌビディアは全盛期を迎えたが、ハードウエア生態系の母体だったオフライン商圏は直撃を受けた。
それでも現場は諦めず、自助策を探している。個別消費者の目線に合わせた小型PCの組み立て、非規格製品の修理など、大企業が対応しにくい「隙間」を掘り起こし、突破口を見つけようとしている。
AI革命は従来の文法を壊し、新しい秩序を築いている。個人用PC消費に依存していたコンピューター市場は、巨額資本が投入されるAIサーバーやチップセット中心に再編された。
これは韓国の龍山電子商街も同じ現実だ。
かつてフアン氏が自ら足を運んで営業するほど好況だった龍山電子商街は、電子商取引の流れから外れたうえ、AI活況に伴う世界的な部品不足まで重なり、これまでになく厳しい冬の時代を迎えている。
おそらく、これがAI時代の最も逆説的な場面なのかもしれない。過去にフアン氏を育てたのは、数多くのネットカフェと電子商街、組み立てPC市場だった。しかし今、AIが導く新たな秩序は、まさにその生態系から変えている。
それでも、先端技術が生む大波の中で黙々と活路を見つける光華商場の商人たちは、あることを証明している。
光華商場の商人たちはAIを作らない。エヌビディアのように時価総額数兆ドルの企業を築くこともできない。だが、AIが再編した市場の中で生き残るため、誰よりも先に変化を体感し、適応している。龍山もまた、そう努力している。
結局、技術革命が生み出すのは勝者だけではない。新しい秩序に押し出される産業も、その隙間で再び生き残る方法を探す人々も、ともに生み出す。
AI時代を動かす力は、技術そのものではなく、変化に適応しようとする人間の粘り強さなのかもしれない。【news1 キム・ミンジェICT科学部記者】
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