韓国のユン・ソンニョル(尹錫悦)氏の大統領当選後、産業通商資源省が担っている現在の通商業務機能を外務省に移管する新政権の組織再編案が浮上している。通常業務も人的インフラに基づいているとして、外務省に移管すればさらに相乗効果が出せるという主張が、「国民の力」の内部から出ているという。
一方、ロシアのウクライナ侵攻など世界経済状況が一刻を争う状況で、いわゆる「経済安保」を担う通商分野のコントロールタワーを変えることは慎重でなければならないという反対の声が少なくない。
政府・政界関係者らによると、政権引き継ぎ委員会の構成に合わせ、こうした改編案が取り上げられている。
これはユン氏の所属する「国民の力」の内部でも外務省出身者が主張している。パク・ジン(朴振)議員やキム・ソンハン(金聖翰)元外交通商省(現外務省)第2次官が代表格だ。キム元次官は政権引き継ぎ委の外交安保分科幹事を務め、パク議員は該当分科委員の任命が有力とされている。このため、ユン氏の見解にも自動的に彼らの考えが反映される見通しだ。
外務省の通商業務は異質なものではない。1998年に発足したキム・デジュン(金大中)政権からイ・ミョンバク(李明博)政権にかけ、通商業務は外務省の所管で名称も「外交通商省」だった。だが、2013年にパク・クネ(朴槿恵)政権になって経済関連省庁である産業省に移管されたあと、現政権では、産業省で通商業務を担当する通商交渉本部が設置され、次官級の通商交渉本部長を置く形で維持・運営されている。
通商業務の外務省への移管を主張する側には、外務省には世界各国の人的インフラ、現地公館などを活用できる利点があり、業務の相乗効果を出せるという判断がある。実際、イ・ミョンバク政権までは同じ理由で外務省に通商機能を任せてきたことから、機能面で疑う余地はないということだ。
一方で、反論も根強い。
単に新政権の発足に合わせて組織再編を推し進めるには、直面した世界経済が容易ではないという指摘だ。
ロシアのウクライナ侵攻による対ロシア制裁対応、韓国産業界の被害最小化のための対策づくり、長期化する半導体などのグローバル供給網解決……。次期政権はこうした通商危機への対応が求められている。この状況のなかで、「経済安保」コントロールタワーがかわれば、不必要な混乱が引き起こされることになる。
ある政府高官は「『国民の力』内部の外務省出身者を中心に話が出ているというのは聞いた。今のような経済状況で機能を移管し、組職を効率化するような時間的余裕があるのか疑問」と懐疑的な見方を示している。
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