
韓国で企業のYouTube戦略が変化している。単なる商品紹介にとどまらず、ブランドを酷評してきた人物をあえて広告モデルに起用したり、著名人ではなく自社社員を前面に出したりと、「誠実さ」と「面白さ」を両立させる試みが広がっている。
韓国ロッテグループ傘下のロッテGRSは、ハンバーガーチェーン「ロッテリア(Lotteria)」の広告モデルに人気YouTuberのチムチャクマンを起用した。チムチャクマンは過去の個人配信で、ロッテリアの商品に対し「味が似たり寄ったりだ」「根本(こだわり)がない」などと、ファンとの間で語り草になるほど酷評していた人物だ。
本来であれば企業側が敬遠しがちな存在だが、あえて“最大の批判者”を広告塔に据える逆転の発想が、ネットユーザーの間で大きな話題を呼んだ。
1月2日に公開された公式YouTube動画では、チムチャクマンが商品を大げさにからかう様子と、それを見守るロッテGRS法務チーム社員の厳しい視線を対比させる「自虐的かつコミカル」な演出が注目を集めた。この動画は公開後、再生回数約271万回を記録。その後も「コンサルティング編」「アルバイト体験編」などが相次ぎ公開され、いずれも高い支持を得ている。
ロッテGRS関係者は「両者の“因縁”を知る消費者が、これを単なる広告ではなく、一つの自然で愉快なストーリーとして受け止めてくれた」と分析する。
消費者との接点が限られるB2B寄りの業界も、YouTubeとファンダム文化を活用してイメージ刷新を図っている。
韓国製紙連合会は、ガールズグループITZY(イッチ)のユナと協業。紙製品だけで一日を過ごすという形式の動画を制作した。製紙産業=環境破壊というネガティブな誤解を解く内容だが、硬くなりがちな環境メッセージをアイドル文化と結び付け、親しみやすく伝えた点が評価された。このショート動画は約69万回再生されている。
一方、著名人を一切起用せず「誠実さ」のみで勝負する例も成功を収めている。東遠(ドンウォン)グループの公式チャンネル「東遠TV」は、2026年2月までに累計再生回数2億回を突破した。同チャンネルは、自社社員や製造現場の職人を主役に据え、企業活動の本質や製品へのこだわりを愚直に紹介するスタイルを貫いている。外部のスターが登場しない動画でも100万回を超える再生を記録するなど、コンテンツの質でファンを獲得した。
業界関係者は「現在の企業YouTubeは、一方的な情報発信の場ではなく、ブランドの物語を通じて共感を生むプラットフォームへと進化している」と指摘する。消費者が「聞きたい」と思う物語を、企業のアイデンティティーといかに柔軟に結び付け、飾らずに提示できるかが成功の鍵となっている。
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