2026 年 2月 15日 (日)
ホーム社会ニュースを“信じる”前に、“見抜く”力を…いま必要な民主市民教育とは

ニュースを“信じる”前に、“見抜く”力を…いま必要な民主市民教育とは [韓国記者コラム]

(c)news1

ニューヨーク大学の物理学教授だったアラン・ソーカルは、晩秋から初冬にかけて、量子力学で社会的構成主義を説明する論文を書き上げた。

彼はその年の年末、ポストモダン系の学術誌に論文を投稿した。約1年半後の1996年5月、特集号に掲載されたその論文は、量子力学で社会的構成主義を論証したとして好意的な評価を受けた。量子力学の不確定性が、普遍性を否定し相対的知を強調する社会的構成主義と符合して見えたからだ。

しかし3週間後、ソーカル自身が「これは偽の論文だ」と暴露し、学界は衝撃に包まれた。専門用語ともっともらしい論理で包めば、でたらめな情報も信頼できる知識に化ける――その実態を示した事件だった。

この出来事は、偽の知が社会でどう流通し機能するのかを暴いた点で、今日あふれるフェイクニュース問題を考える手がかりを与える。

AI時代に入り、虚偽情報はさらに速く拡散・再生産される。歪んだ統計の引用や、数字の恣意的な切り貼りも横行する。

フェイクニュース論争を招いた経済団体の事例では、結論ありきで統計を取捨選択した可能性が指摘された。出典がマーケティング資料に近いと判明して実像は明らかになったが、もし信頼性の高い機関の数字を精緻に加工していれば、多くの人が流されかねないテーマだった。

昨年には、米CNBCを引用した関税猶予の虚偽情報が広がり、ニューヨーク株式市場が1日で約700ポイント近く乱高下したこともある。再生数が収益に直結する1人メディア中心のユーチューブでは、偏向的で刺激的な虚偽情報が出回りやすい。主張と根拠が乖離していても、科学や社会学の言葉で結び付け、説得力があるように装う。

学術誌に偽論文が載った過程と酷似している。大量の引用、偽の統計、文脈に合わない事実関係で、仮説が証明されたかのように語る。売り上げ増と健康効能に直接の関係がなくても、「売り上げが伸びている会社の製品だから体に良い」と説明する動画が典型だ。

ソーカルは、初稿投稿後に編集から修正要請がなかったと語った。ここに、フェイクニュース対策の重要なヒントがある。

各国は、供給者・流通経路・消費者という三つの接点で遮断策を模索している。意図的に作る供給者を処罰し、流通プラットフォームには収益遮断などの自浄を求める。即効性はあるが、検閲批判に直面しやすく、消費が続けば抑止効果は薄れる。罰を上回る利益が見込めるなら、供給は止まらない。

だからこそ、消費者がフェイクニュースを消費しなくなる環境づくりが要る。編集要請の欠如を指摘したソーカルの言葉は、受け手側の徹底した検証を求めたものと読める。問題は、研究者に比べ、一般の消費者が情報の真偽を検証する訓練に乏しい点だ。そこで注目したいのが、知識・事実・意見を見分け、判断する練習を促す民主市民教育である。

韓国政府が民主市民教育の強化に言及すると、特定の思想を教え込むのではという懸念から政治的対立を招くことがある。しかし、ここで言う「教育」は、教え込むことではなく、情報や知識の背後にある意図を議論し、見抜く思考訓練に近い。フェイクニュースが社会的脅威となる今、むしろ重要性は増している。

最後に問い直したい。「大人は、歪んだニュースや情報に、若者よりも流されない自信があるだろうか」。最低限の民主市民教育が前提なら、答えはこうだ。

子どもたちの方が、私たちより賢明になれる。【news1 イム・ヘジュン社会政策部長】

(c)news1

RELATED ARTICLES

Most Popular