現場ルポ
世界最大の移動通信展示会「モバイルワールドコングレス(MWC)」が3月3日までスペイン・バルセロナで開かれた。新型コロナウイルス感染のパンデミックを経て3年ぶりに正常化されたイベントだった。5Gが話題をさらった2019年のイベントとは違い、今年のMWCでは5Gで可能になったモバイル・通信技術の未来課題に対するビジョンに集中した。人工知能(AI)、ロボット、メタバースなどが主流で、5G基盤の多様なB2B(企業間取引)事業が強調された。
183カ国1500の業者がブースを構えた。2000社以上が参加した2019年の行事には及ばないものの、回復に向かっていることを印象づけた。韓国国内MWCの常連であるサムスン電子やモバイル通信3社も軒並み参加した。
今年のイベントは「連結性の触発」(Connectivity Unleashed)をテーマに開かれた。このテーマにふさわしく、展示場は「知能的に連結された」(intelligently connected)、「知能的な通信」(Intelligent telecommunications)などのフレーズで埋め尽くされた。5Gばかりが強調された2019年のイベントとは対照的だ。これまでは見られなかったメタバースへの言及も目に付いた。XR(拡張現実)を押した米クアルコムも、メタバースという用語を掲げた。
一方、韓国の大手電気通信事業者「LGユープラス(LG Uplus)」のファン・ヒョンシク(黄鉉植)代表はこんな見解を示した。
「通信会社が悩んできたことが、今回のMWCに多く出てきたようだ。MWC全体のテーマは連結性の触発となっているが、今は5G単独だけではない。すべての物が連結され、AIのようなソリューション、ビッグデータなどが集まり、これを促進させることができる5Gが統合された時、事業的により大きな機会が開かれると予想した」
韓国通信大手「SKテレコム(SKT)」のユ・ヨンサン(柳英相)代表はこう語っている。
「SKT2.0の核心はAI基盤サービスカンパニーだ。このため核心事業である有線・無線通信、成長性の高いエンタープライズ、アイバース(AI-VERSE、AIとメタバースの融合)に代表されるAIサービス、コネクテッドインテリジェンス(Connected Intelligence)に代表される5大事業群に再編し、各事業群の成長に最適化された戦略を実行し、企業価値を極大化する」
携帯電話通信の国際業界団体「GSMアソシエーション(GSMA)」のマッツ・グランリド事務局長はMWC初日の基調演説で「5GAI、IoTそしてビッグデータは私たちの未来を構築中だ」と述べ、連結性に基づいたスマートシティ、フィンテック、プロップテックなどの事業成長を取り上げた。
韓国通信会社KTのク・ヒョンモ(具鉉謨)代表は「(中国通信機器最大手の)華為技術(ファーウェイ)をはじめ機敏に動く事業者はB2Bを話す」とし、「脱通信」が大勢となった状況に言及した。また「KTは通信会社ではない。今後はコリアテレコムではなくコリアテクノロジー、コリアトランスフォーメーションになれる」と宣言した。
実際、ファーウェイは主にB2B領域の技術や事例を展示した。 中国での化学工場、鉱山などに5G技術を適用して作業管理効率を高めた事例を強調した。
韓国通信3社も同様に、5G自体よりは5G基盤の未来食品事業を展示するのに力を入れている。 SKテレコムは、メタバースやAI、都心航空交通(UAM)など、未来先導技術やサービスを紹介した。KTはAIロボットサービスを披露している。
このように、5GがMWCで“行方不明”になった理由は、商用化4年目を迎えた5Gが、もはや目新しくないからだ。メーカーは5Gが日常の中に浸透し、5Gそのものより、ネットワーク技術に基盤したB2Bサービスに焦点を合わせているとみられる。
©news1