BTSとK-POPに活路
「ポストコロナ」時代を控え、大きな変化が予想されるコンテンツ産業のなかで、韓流はどのような変化を遂げようとしているのか。その現状を分析してみました。(シリーズ1/計7回)
日本や東南アジアなど、アジア圏で目立っていた存在に過ぎなかった「韓流」の地位が変わった。男性音楽グループ「BTS(防弾少年団)」が「Dynamite」で米ビルボードのチャートを席巻し、映画「パラサイト 半地下の家族」がカンヌ国際映画祭と米アカデミー賞で数々の賞に輝き、ハリウッドの威信をくじいた。
「『BTSInc.』(BTS株式会社)は、韓国の国内総生産(GDP)を左右する世界的な経済の推進力になった」
1964年、米ビルボードチャートをビートルズの「シー・ラヴズ・ユー」(She loves you)が席巻した。その後「抱きしめたい」(I Want to Hold Your Hand)が1位を継いだ。英国からやってきた新米バンドがビルボード史上初めて、自分たちの曲でトップをバトンタッチする記録を作ったのだ。
それから半世紀が過ぎた2021年、ビルボードで似たようなことが起きた。BTSが2021年5月に発表した「Butter」がメインシングルランキング「HOT 100」でのトップ10入りが12週目(8月17日基準)となり、9回も1位を獲得した。そして、この期間中に新曲「Permission to Dance」が1位となった。
日本や東南アジアなどアジア圏での旋風にとどまっていた韓流が、BTSをきっかけにグローバルな文化に浮上した。K-POPとともに「ドラマ」「美容」「食」など多様なジャンルの「K」シリーズが「新韓流」として親しまれている。アニメやウェブトゥーンなど「デジタル韓流」も市場をつかんだ。
かつては好奇心から「一度は韓流でも」という気持ちだったものが、今は生活の奥深くに定着し、日常で広範囲に消費されている。この違いはすなわち「韓流が新しい段階に進化している」ということを示しているのだ。
関連業界によると、BTSをはじめとするK-POPブームについては、韓国内よりも、むしろ外国での分析に力が入っている。
米公共ラジオ(NPR)は最近、BTSの文化的波及力と経済的効果を展望した。これまで彼らがK-POPに対して批判的な見方を続けてきたという点を考慮すれば意外なことだ。言い換えれば、世界の音楽市場でこの数年間続いているBTSやK-POPの影響力を、これ以上無視できないということが背景にある。
NPRはBTSを「株式会社」と呼んだうえで「雇用など数十億ドル(数千億円)の収益を創出する、世界経済の大きな推進力だ」と説明した。現代経済研究院の統計を引用しながら、BTSが韓国にもたらす利益は、米国の名目GDPの0.5%に達する年間50億ドル(約5710億円)だと強調した。
評論家のチャ・ウジン氏は「1、2年前まで、米国など海外メディアのK-POPの扱い方は、ややぼんやりとしていたが、最近になって非常に深く分析している」と指摘する。そのうえで「既存の音楽産業が、デジタル化と、新型コロナウイルス感染の世界的大流行(パンデミック)による衝撃で困難な状況になっている。そこで、BTSとK-POPに活路を見いだしたわけだ」と説明している。
(つづく)