2026 年 1月 25日 (日)
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「沈黙する北朝鮮大使館」プノンペンで見た異様な静けさの裏側

2026年1月12日、カンボジア・プノンペンにある北朝鮮大使館の外観(c)news1

1月12日、カンボジアの首都プノンペン中心部。独立記念塔の近く、交通騒音が絶えない大通りから数歩入った場所に、北朝鮮大使館が姿を現した。想像に反し、周囲は静まり返っていた。通行人の姿はなく、記者が建物に近づいて写真を撮っても制止はなかった。警備詰め所には現地警察とみられる警備員がいたが、特段の動きは見られなかった。

フン・セン前首相の官邸に隣接する立地から厳重な警備を想定していたが、実情は正反対だった。右隣のインドネシア大使館では警備要員の出入りが頻繁で、緊張感の違いが際立っていた。

大使館前の掲示板には7枚の写真が掲出されていた。中央には、2024年6月の党中央幹部学校竣工式で演説するキム・ジョンウン(金正恩)朝鮮労働党総書記の写真。その左右には、1986年12月に学生の新年公演に出席したキム・イルソン(金日成)主席、2010年4月に金日成総合大学の元老教授らと並ぶキム・ジョンイル(金正日)総書記の写真が配置されている。

三代の指導者を並べた構図は、キム・ジョンウン総書記の地位を視覚的に強調する意図がうかがえる。実際、党中央幹部学校の竣工式では、キム・ジョンウン総書記の肖像がキム・イルソン主席、キム・ジョンイル総書記と並んで掲げられる場面が確認され、先代指導者と同格に位置づける動きが進んでいるとの分析も出ていた。

掲示板にはこのほか、平壌の紋繍ウォーターパーク、改装された地下鉄駅、新都市・和盛地区の住宅など、住民が「現代的な文明」を享受しているかのような写真も貼られていた。ただ、最高指導者の写真が2年前のものにとどまっている点はやや不自然だ。今年に入ってもキム総書記の公開活動は活発で、新政策の宣伝も続く中、なぜ最新の写真を掲げていないのか疑問が残る。

大使館が通常通り稼働しているのかも判然としなかった。他国駐在の北朝鮮大使館では取材規制が厳しく、特に韓国人と見られる人物が近づくと警戒が強まるのが通例だが、この日は内部に動きが見られなかった。

◆国交62年の北朝鮮とカンボジア…制裁で疎遠も「資金洗浄」で再接近か

北朝鮮とカンボジアは1964年に国交を樹立し、翌年から当時のシアヌーク国王とキム・イルソン主席の個人的関係を軸に蜜月を築いた。1997年にフン・セン首相(当時)が主導権を握った後、カンボジアはシアヌーク国王の反対を押し切って韓国と国交を結んだが、北朝鮮料理店が繁盛するなど関係は一定程度保たれてきた。

転機は国連の対北朝鮮制裁だった。カンボジアは2017年の安保理決議2397号に基づき、派遣労働者の送還を厳格に実施。2019年12月までに北朝鮮労働者115人が帰国し、国内の北朝鮮料理店はすべて閉店した。人的交流が途絶え、関係は冷え込んだが、形式的なやり取りは続いた。北朝鮮は2023年にフン・マネット首相就任への祝電を送り、昨年12月にはカンボジア国王がキム・ジョンイル総書記の死去14周年に際し弔意を示した。

その背後で「秘密取引」があるとの見方も根強い。米韓など11カ国が設けた多国籍制裁監視チームの報告によれば、北朝鮮は各国の暗号資産取引所から毎年数兆ウォン規模の暗号資産を奪取し、カンボジアや中国で現金化しているという。韓国人を狙ったオンライン詐欺にも関与したとされるカンボジアの金融グループ「フイオン」は、北朝鮮の資金洗浄を助けた疑いで米英から越境犯罪組織に指定された。

これらの状況が事実で、カンボジア当局の黙認があったとすれば、両国関係は外見以上に密接なのかもしれない。昨年から東南アジア諸国との関係修復に動く北朝鮮が、今年カンボジアとの外交的動きを拡大させるのか、注目される。

(c)news1

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