韓国企業の合併なのに「EU主導」
日本でもおなじみの大韓航空とアシアナ。韓国を代表する航空2社の合併に注目が集まっています。韓国公正取引委員会が「条件付き承認」の決定を出し、プロセスは「5合目を越えた」と言われています。現状を取材しました。(シリーズ5/6)
◇制度改善
韓国の企業合併審査制度――。「独占規制および公正取引に関する法律」(公正取引法)の施行(1981年)後、40年以上にわたって公正取引委員会が維持してきた大きな枠組みだ。
公取委がこの改善に着手した。
韓国では最近、今回の大韓航空とアシアナ航空に加え、現代重工業と大宇造船海洋など、グローバル企業の合併を承認するかどうかが大きな問題となった。
世界1、2位の造船会社である現代重工業と大宇造船海洋は2019年1月に合併を決定し、同年7月に公取委に審査を申請した。しかし2年半もたった2022年1月、ようやくEU当局が「不承認」という結論を出し、合併が白紙化された経緯がある。
大韓航空とアシアナ航空も2021年1月の申請から承認まで1年以上かかった。しかも米欧では当局の判断が出ておらず、両社の合併まで、まだ乗り越えなければならない壁が残っている。
これらの審査の過程で海外の競争当局との制度の違いが浮上し、審査期間が長引いた。これにより企業の負担を増大させた――こうした指摘が相次ぎ、改善の必要性に迫られたのだ。
韓国企業間の買収合併の主導権を、韓国の公取委ではなく、海外競争当局が握る場合も少なくない。それゆえ、公取委は、企業合併審査を▽競争制限性の判断▽是正措置案作り――の2段階に分け、当事者企業の意見をより多く反映する欧州方式に制度改善を検討しているのだ。
2月22日午前、韓国政府庁舎で、公取委のチョ・ソンウク委員長は大韓航空とアシアナ航空の「企業合併審査の結果」を発表する際、こうした経緯について触れ、韓国の制度に「国際的な整合性」を持たせるための改善案を検討すると明らかにした。
公取委は今年上半期中の分析を通じ、米欧など海外競争当局の合併審査法制を比較・検討した後、必要に応じて法改正案を作成する計画だ。
◇グローバルでなかった時代の産物
問題点を改めて整理してみる。
主要国の競争当局の審査に時間がかかる。それゆえ、企業経営の正常化と世界市場での競争力強化に向けて推進した合併が、足を引っ張られている。
進出している国ごとに企業審査制度が異なる。それゆえ、結論が違ってくる可能性も高い。
したがって、国ごとに対応を変えなければならない。それゆえ、企業の負担が増す。
どう改善すればよいのか――。
今、取りざたされているのは「まず公取委が独寡占の危険を判断する。その後、独寡占の解消案は企業自らが作って提出する」。欧州式の企業審査制度だ。言い換えれば、公取委による判断の比重を減らし、当事者企業の関与を増やして審査の速度を高め、企業の受け入れ可能な度合いを高める、という構想だ。
公取委のコ・ビョンヒ市場構造改善政策官はこんな解説をしている。
「国際的に多数の国が企業合併を審査している状況でも、韓国の企業合併制度は長い間、大きな枠組みを維持してきた。韓国企業がグローバルでなかった時代に作った制度なので、外国の審査対応をめぐり混乱を招く部分がある。競争制限性の判断と是正措置案を作る部分を区別し、2段階で審査するのが第一の方向だ。そして、企業が自主的に是正案を迅速に作成し、競争回復に向けた力を強化する必要がある」
(つづく)