
韓国のランニング人口が約1000万人とされる中、2025年に最も注目を集めた人物が“浪漫ランナー”と呼ばれるシム・ジンソク選手(29)だ。電話インタビューでは「走っていて諦めたくなる瞬間はないのか」と問われ、即座に「低体温症や重い脱水、激しい筋肉けいれんでない限り、私に諦めという選択肢はない」と言い切った。
シム・ジンソク選手の特徴は、マラソン序盤から全力疾走するかのような「オーバーペース」戦略だ。体力温存を勧める周囲の助言にも耳を貸さず、この走法を貫いてきた。本人は「オーバーペースでも後半に大きく失速しない。途中で諦めたり、ペースを落としてけがをしたりしない」と自信をのぞかせる。今季最後の大会となった第35回晋州マラソンでも、前半ハーフを1時間19分、後半を1時間20分で走り切り、後半の失速はなかったという。
身長168センチ、体重54キロ。マラソン選手として理想的な体格とも評される。高校時代から走れば常に1位を取る存在で、教員や友人からマラソンを勧められていた。2015年に本格的に競技を始め、5キロ、10キロ、ハーフ、フルと距離を伸ばしていった。
2025年は全国のマスターズ(上級アマチュア)大会に47回出場し、33回で優勝。ほぼ毎週末レースに出ていた計算だ。フルマラソンの自己最高は2時間31分15秒で、2026年は2時間29分台を目標にしている。
注目を集める理由は成績だけではない。シム・ジンソク選手は家計を支えるため、建設現場で働きながら走り続けてきた。両親は健康状態が良くなく、兄はてんかんを患っている。彼が選んだのは、比較的賃金の高い「足場工」という道だった。2017~2018年の海兵隊での兵役期間を除き、長く建設現場に身を置いてきた。
専門的な指導を受けた経験はなく、トレーニング方法も常識外れだ。安全帽をかぶり、水筒入りのかばんを背負い、安全靴を履いたまま通勤往復8キロを走っていた。スマートウォッチも使わず、1万円台のカシオ製電子時計でレースに臨む。現在は全国マラソン協会で働きながらも、週1~2回は安全靴で坂道中心の練習を続け、月間走行距離は600~700キロに達する。
シム・ジンソク選手は「慣れているから大きなけがはなかった」と語る一方、「危険なので自分の方法をまねしてはいけない」と強調する。走ること自体が幸福であり、ストレスを解消してくれる存在だという。
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