
韓国・務安国際空港の済州航空機の墜落事故から12月29日で1年となる。事故原因の究明を担う航空・鉄道事故調査委員会(航鉄委)はいまだに最終結論を出していない。調査の公正性と独立性を巡る疑念がくすぶり続け、遺族や市民団体の不信感は募るばかりだ。
事故発生直後、航鉄委はコックピット音声記録装置(CVR)や飛行データ記録装置(FDR)、エンジンを回収し、海外の専門機関に精密分析を依頼するなど初動調査に着手した。しかし、同委員会が国土交通省の傘下機関であることから、調査の独立性に疑問が投げかけられた。
特に、当時の委員長が元国土交通省官僚、常任委員長が現職の航空政策室長だったことから、「監督責任のある省庁が自らの不備を公平に調査できるのか」との批判が噴出。結局、委員長は辞任し、航空政策室長も調査から外されたが、体制刷新後も信頼は十分に回復されなかった。
問題は、調査結果の発表をめぐる混乱にも表れている。航鉄委は2025年7月にエンジンの分析結果を公表する予定だったが、遺族の反発で中止となった。調査内容に操縦士の判断ミスを含むと伝えられ、「十分な情報開示がないまま、操縦士の過失を強調しようとしている」との批判が上がった。
12月にも公聴会形式で調査結果を発表する予定だったが、資料の事前開示がないまま一方的に進められようとしたため、これも延期された。調査人員は当初10人未満にとどまり、「コンクリート盛り土との衝突影響分析」などの重要事項は民間業者に約1億ウォンで外注されるなど、調査手法にも限界があった。
これまでに公式に確認された内容は▽事故機が方向指示施設(ILS)に衝突する約4分前にブラックボックスの記録が中断されていた▽鳥との衝突により非常事態宣言(メーデー)を出し、その後約4分間飛行し、着陸装置(ランディングギア)を降ろさないまま胴体着陸を試みて方向指示施設に衝突した▽左右のエンジンからカモ類の羽根と血痕が検出された――などにとどまっている。
こうした中で、調査機関の構造的限界を克服するため、航鉄委を国土交通省傘下から切り離し、首相直属の国務調整室に移管する内容を含む法改正案が国会常任委員会を通過した。
国土交通省のカン・ヒオプ次官は、事故1年の追悼式で「法案が国会常任委を通過したことを受け、国土交通省としても速やかな移管が実現できるよう積極的に協力する」と述べた。ただし、法案の最終処理や具体的な移管時期は未定だ。
遺族らは「この1年で何が明らかになったのか。調査は本当に独立していたのか」と問い続け、公正かつ透明な情報公開を強く求めている。航鉄委が新たな体制の下で信頼を回復できるかが、今後の焦点となる。
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