
昨年12月の「12・3非常戒厳令」以降、韓国では大統領だったユン・ソンニョル(尹錫悦)氏の弾劾をめぐって、支持・反対両派による大規模な集会が毎週のように続いた。そうした中、これまでの「ろうそくデモ」とは様相の異なる、新たな世代間の政治参加の形が浮き彫りとなっている。
弾劾賛成の集会では、かつて若者文化の象徴とされたK-POPアイドルの「ペンライト(応援棒)」を掲げる中高年層(50〜60代)が、アイドルの曲に合わせて合唱しながら行進。一方、弾劾反対派の集会では、韓国の国旗「太極旗」を掲げ、愛国歌を合唱する20〜30代の若者たちが目立った。
昨年12月、ソウル・汝矣島(ヨイド)で開かれた弾劾賛成の市民集会では、LEDライトが光るペンライトを手にアイドルソングを歌う中高年の姿があちこちで見られた。
参加者のユンさん(31)は「ロウソクは風で消えてしまうが、ペンライトなら安心して使える。明るく楽しい雰囲気の中で、政治的メッセージを発することができた」と振り返った。
また、キムさん(58)は「若者たちがペンライトを持って集まる姿を見て、自宅に戻って娘に『うちにもある?』と尋ねたほど。暗い気持ちで行った集会だったが、元気をもらって帰ってきた」と語る。
かつては高齢者中心とされた保守派の「太極旗集会」にも変化が見られた。今年1月、ソウル・漢南洞(ハンナムドン)の大統領公邸周辺で開かれた弾劾反対集会には、大学生らしき若者たちの姿が目立ち、学生ジャンパーを着用した20代の参加者も多かった。
参加した大学生のソンさん(25)は「集会に参加することで社会の問題を自分の目で見て考えるようになった。保守集会=高齢者という時代ではない。若者たちの関心も高まっている」と述べた。
アンさん(65)も「若者の方が多く見える日もあった」と驚きを隠さず、「政治に対する若い世代の関心の高さを肌で感じた」と話した。
◆専門家「韓国社会の成熟の証」
このような市民運動の変化について、専門家は「韓国社会が成熟したことの表れ」と分析している。
成均館大学社会学科のク・ジョンウ教授は「深刻で厳粛な抗議というより、フェスティバルのように楽しみながら参加する新しい形が生まれている。これは経済発展と民主主義の成熟の結果」と述べた。
また、慶熙大学のキム・ジョンヨン教授は「世代間の共存と新しい政治主体の登場が同時に進行している」と評価した。
一方で、1月18日未明、ユン前大統領に対する拘束令状が発布されると、支持者らがソウル西部地裁に乱入、建物のガラスを破壊し、暴徒化する事件が発生。この「西部地裁事件」については、各方面から厳しい非難の声が上がっている。
20代会社員のイさんは「司法判断に不満があっても、暴力は絶対に許されない」とし、40代のヤンさんも「単なる一部の過激行動と見るのではなく、社会全体の問題として背景を検証すべきだ」と訴えた。
韓国検察によると、11月24日時点で同事件に関連して計140人が起訴された。うち95人が身柄を拘束されたまま公判を受けており、残る45人は在宅起訴となっている。
市民の政治参加は成熟と多様化を見せる一方で、一部の過激化によってその信頼が揺らぐ懸念もある。専門家や市民からは「平和的で安全な表現の場」を守るためにも、過激な行動への厳正な対応と、より開かれた社会的対話の必要性が強調されている。
(c)news1

