
韓国経済は拡張的な財政政策の効果により、2026年には潜在成長率水準を回復すると見られている。しかしその一方で、国家債務の急増と財政赤字の拡大により、財政健全性の悪化が深刻な懸念材料となっている。
国際通貨基金(IMF)は11月24日、韓国企画財政省が公開した「2025年IMF年次協議報告書」で、「韓国経済は今年下半期から回復局面に入り、来年には潜在成長率の水準に達する」との見解を示した。成長回復の要因としては、財政出動や金融緩和策、消費心理の改善などを挙げている。
実際、イ・ジェミョン(李在明)政権は今年7月、景気刺激策として31兆8000億ウォンに上る第2次補正予算を編成し、全国民に15万ウォン規模の消費クーポンを配布。非首都圏・人口減少地域への支援強化、AI・気候対応など新産業分野への投資も拡大させた。
しかしこのような短期的な成長回復の裏では、管理財政収支の赤字や国家債務の膨張が顕著だ。IMFは報告書の中で「成長の恩恵を得る一方で、中期的には財政健全性の悪化やインフレ圧力がリスクとして存在する」と警鐘を鳴らした。
企画財政省の試算によると、2025年の国家債務は1415兆2000億ウォンに達し、GDP比で51.6%にまで上昇する見込み。今後5年間で国家支出は年平均5.5%ずつ増加し、2029年には1788兆9000億ウォン(GDP比58.0%)に達するとの予測もある。
管理財政収支の赤字も拡大傾向を示しており、来年はGDP比4.0%の109兆ウォン、2028年には4.4%に達すると見られている。政府が当初掲げた「管理財政収支の赤字をGDP比3%以内に抑える」という財政ルールは、事実上有名無実化した形だ。
米韓通商協議の合意に伴い、韓国政府は来年から毎年50億ドル規模の「対米投資特別基金債(仮称)」を発行する見通し。これにより、国家保証債務も急増する可能性がある。
政府提出の「2025~2029年国家保証債務管理計画」によれば、保証債務は今年の16兆7000億ウォンから2029年には80兆5000億ウォンへと5倍近くに膨らむ見込みだ。
保証債務は、会計上は国家債務に含まれないが、債務者が返済不能に陥った場合、政府が代位弁済をする「潜在的国家債務」に該当する。IMFもこの点をリスク要因と位置づけており、2029年にはGDP比3.2%に達する可能性を指摘している。
こうした状況を受け、専門家からは来年以降、拡張財政のスピードを緩め、財政構造の見直しと基準点の再設定を進めるべきだとの指摘が出ている。
弘益大学のソン・ミョンジェ教授は「短期成長のための財政出動は一定の成果を上げたが、国家債務の増加スピードがあまりに速い。今後は徐々に正常化の道を歩むべきだ」と述べた。
一方、拡張財政の縮小が成長エンジンを阻害しかねないとして、「財政縮小よりも財源拡充を重視すべきだ」という意見も根強い。
忠南大学のチョン・セウン教授は「韓国の公共支出はOECD平均に比べて依然として低水準であり、歳出を削るのではなく増税による財源確保が必要だ。このような成長モメンタムが形成されつつある時期に財政を締め付ければ、家計債務が悪化し、経済全体の潜在力が低下しかねない」と懸念を示した。
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