
「預け入れ手荷物はすべてX線検査を実施しています」。一つの画面3〜5秒。瞬時に危険を見抜かなければならない。その現場が韓国・仁川国際空港税関・X線判読室だ。11月19日、空港税関の最前線を取材した。
荷物はコンベアでX線装置を通過し、その映像が直ちに判読室のモニターへ送られる。係員たちは次々と送られてくる画像を数秒でチェックし、異常があれば「電子タグ」を付けて選別する。
電子タグの色は4種類。赤は銃器や電気ショック器などの国家安全保障に関わる物品▽黄は課税対象の高価品や違法薬物、精神薬など▽緑は土の付いた植物や果物▽オレンジはソーセージやジャーキーなど動物検疫対象品――に使われる。
緑とオレンジのタグは検疫部門へと送られ、税関は安全保障・課税・薬物に関する荷物に集中している。
最近摘発された例では、マレーシア発のメタンフェタミン5.5kgを、キャリーケースの底面のハンドル支柱下に薄く隠していた。税関関係者は「最近では構造体の隙間を使うほか、スーツケース全体を“薬物そのもの”で満たす大胆な手法も現れている」と指摘する。
短時間で全てを見抜くため、日常的な訓練や事例共有、模擬演習が実施され、判読の精度向上に努めている。
判読室の外では麻薬探知犬「マルリ」(7歳、ラブラドールレトリバー)の実演があった。訓練用大麻サンプルが隠されたスーツケースの前でマルリが立ち止まり、座り込むと、担当職員は「この子たちはおもちゃをもらうために働いているようなもの。麻薬の匂いを見つけると即座に報酬を与える訓練方式です」と語る。
マルリは間もなく“引退”する。税関では引退後も譲渡などを通じて最後まで管理しており、「一緒に働いた仲間だ」としている。
薬物が疑われる手荷物は精密検査室へ。人体への隠匿が疑われる場合、同意を得たうえで下着まで脱いでもらい、検査するケースもある。
高リスク麻薬は透明なボックス状の「破壊検査機」で真空状態に近い環境下で開封され、職員や旅行者を保護する。その後、イオンスキャナー、分光器、試薬キットの3段階で最終判定に至る。
仁川空港の入国者数はコロナ前の水準をすでに上回った。2019年には1日平均8万6000人だったが、パンデミック期には3600人まで激減。しかし2023年には8万7000人、2025年10月時点では9万1000人まで回復。秋夕連休には1日12万人を超えた。
「韓国の税関検査の厳しさは世界トップレベル。善良な旅行者は税関の存在を感じさせずに通過させる一方で、危険物は確実に摘発するのが我々の目標」。税関関係者はこう語った。
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