
北朝鮮が11月18日、「ミサイル工業節」を迎えたが、当日、軍事的動きは確認されておらず、関連報道もない。ミサイル工業節は、2022年11月18日に新型大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星17型」の最終発射成功を記念して制定されたもので、昨年から年次記念日として扱われている。
だが、今年は北朝鮮の国営メディアである朝鮮中央通信や労働新聞でも、この記念日への言及は今のところ見られない。韓国統一省報道官も「北朝鮮に特別な動きはない」と17日に発表しており、例年とは異なる静けさが目立つ。
専門家によると、北朝鮮が年末の朝鮮労働党全員会議や2026年初頭に予定されている第9回党大会といった重要な内部イベントを控えているため、当面は経済・民生課題の仕上げに注力し、軍事挑発は抑制する方針とみられる。
韓国・慶南大学極東問題研究所のイム・ウルチュル教授は「ミサイル工業節は北朝鮮のICBM開発における大きな節目であるが、すでに先月の『党創建80周年記念軍事パレード』で火星20型が公開されており、再び軍事行動に出る可能性は低い」と分析した。
さらに、火星17型の発射日にキム・ジョンウン(金正恩)朝鮮労働党総書記の娘が初めて公式の場に姿を見せたことから、この日は娘の存在を象徴的に強調する政治的意図が込められた日でもあるとみられている。
北朝鮮は2022年3月、5年間維持してきたICBM発射モラトリアムを破棄し、火星17型の試射を実施。同年11月18日には最終的な発射成功を発表した。韓国合同参謀本部によれば、このときのミサイルは高度6100km、飛距離約1000km、速度はマッハ22(音速の22倍)と観測された。発射は高角度だったため、通常の角度(30〜45度)であれば、飛距離は1万kmを超え、米本土全域が射程に入るとの評価が出ていた。
この発射成功から約1年後の2023年11月5日、最高人民会議常任委員会は火星17型の成功を記念する「ミサイル工業節」を制定。「世界的な核強国、最強の大陸間弾道ミサイル保有国としての威容を示した日」として、国家的な意味を持たせた。
このため、以後は核戦力強化をアピールする場として記念日に合わせた示威行動が展開されるとの見方も一部にあった。近年、北朝鮮は「不可逆的な核保有国の地位」を主張し、米国による対話提案を一蹴している経緯もある。
だがイム・ウルチュル教授は「来年の党大会が終わるまでは、韓国や米国に向けた目立ったメッセージや軍事行動は見せない可能性が高い」と予測している。
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