2025 年 11月 23日 (日)
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韓国が挑む「手術支援ロボット革命」…AI搭載ヒューマノイドが変える「必須医療」

手術現場に参加しているAI基盤のヒューマノイド型手術支援ロボットのイメージ(c)news1

韓国では現在、医療人材の不足や高リスク手術の増加、医療従事者の過重労働といった問題により、「必須医療」の持続的な提供が危機に瀕している。この課題に対する解決策として、韓国政府主導で推進されている「K-ヘルス未来推進団」(韓国型ARPA-Hプロジェクト)は、AIを搭載した物理知能(Physical AI)基盤のヒューマノイド型手術支援ロボットの開発に着手した。

韓国は2025年4月、「K-ヒューマノイド連合」を立ち上げ、主要ロボット製造企業や大学、研究機関が参加して、2030年までにヒューマノイドロボット技術で世界をリードすることを目指している。しかし、現時点では中国や米国に大きく後れを取っており、追随する立場にある。

手術支援ロボット分野では、米インテュイティブ・サージカル社の「ダビンチ・ロボットシステム」が市場をリードしているが、同システムは遠隔操作によって執刀医の動きを正確に再現するロボットアームであり、あくまで「道具」としての役割にとどまっている。

これに対し、K-ヘルス未来推進団が開発中のヒューマノイドロボットは、手術の文脈を理解し、執刀医や助手の動きを補完する「知能型パートナー」としての自律的な機能を備える点で根本的に異なる。

具体的には、ロボットが手術中の進行を予測し、執刀医の指示を待たずとも自ら吸引や牽引、器具の準備・受け渡しといった支援を担うことが可能となる。このような「先読み」と「状況判断」による支援は、手術時間の短縮や医療スタッフの精神的・肉体的負担の軽減に大きく寄与すると期待されている。

また、ヒューマノイドの構造は既存の手術室環境への適応性が高く、固定設置型のダビンチとは異なり、標準化されていない手術現場にも柔軟に対応できる設計が可能だ。韓国型ロボットは、既存のシステムを代替するのではなく、協力的な補完システムとして新たな需要を創出することを狙っている。

このプロジェクトは「ミケランジェロ・システム」という名で開発が進められており、単なる人型模倣にとどまらず、手術機器の扱いや視野確保など実践的な医療支援機能を高水準で実現することを目指す。

開発の成功には、保健福祉省だけでなく、科学技術情報通信省、産業通商資源省、医療機器関連部門など各政府機関の連携が不可欠とされている。AIとロボットの基礎研究から製造・産業化までを一貫して推進するには、部門横断の国家戦略が必要だ。

特にAI性能の鍵となる「データ」の面で、韓国には強みがある。高水準の医療人材による臨床知見やフィードバックは、ロボットの学習精度を高める貴重な資源となり、厳密に管理された医療映像や手術記録などのビッグデータも、物理AIの高度化において国際競争力を強化する材料になる。

このような多省庁の連携と韓国特有の医療・技術インフラを最大限活用することで、韓国発のヒューマノイド手術支援ロボットは、単なる機械装置を超えた「国家的戦略資産」として、世界の手術ロボット市場における新たな標準を打ち立てる可能性を秘めている。

手術現場に真に根ざしたロボットの開発が実現すれば、医療従事者にとってはより安全で効率的な手術環境が提供され、国民には信頼できる医療サービスが還元されることになる。開発責任者であるK-ヘルス未来推進団プロジェクトマネージャーのイ・チャンヒョン氏は「現場で使われない“鉄くず”ではなく、現場中心の実用的ロボットを完成させることが我々の使命だ」と語っている。

(c)news1

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