
史上最高のスプリンターとして広く認められているウサイン・ボルトよりも速く走る四足歩行ロボットが、韓国の研究者たちの手で誕生した。
メガ・ニュース(MEGA News)のシン・ヨンビン記者の取材によると、韓国科学技術院(KAIST)機械工学科のパク・ヘウォン教授は11月13日に西江大学で開かれた第1回韓国ロボット学会エキスパートシンポジウムで、最高時速46.9kmで走行する四足歩行ロボットを含む最近の研究成果を公開した。
パク教授は「四足歩行ロボット『ハウンド(Hound)2』が最近のトレッドミル実験で最高時速46.9km(1秒あたり13.03m)を記録した。ハードウェアはそのままに、モーターコントローラーだけを変えて性能を引き上げた。この速度であれば、100メートルを走った際にボルトの記録を破ることも可能だ」と自信を見せた。
人間が出せる最高速度はウサイン・ボルトが記録したおよそ時速44.7kmとされている。
パク教授の研究チームは2023年末、四足歩行ロボットが100メートルを19.87秒で走り、ギネス世界記録を樹立した。当時は室内のランニングマシン上で時速23.4kmを記録しており、わずか2年で速度を2倍に引き上げたことになる。
パク教授はこの日の講演で、過去10年間にわたるロボット制御分野の進化、特に「Sim-to-Real(シミュレーションから実機へ)」の壁をどう突破してきたかを紹介した。特にハードウェアと動力学、強化学習、生成モデルの融合により、ロボット制御技術が新たな時代に突入していると述べた。
KAISTに着任する前、パク教授はミシガン大学で二足歩行ロボット「メイブル」の研究をしていた。当時はビジョンやディープラーニングが存在しなかった時代であり、人がつまずいた際に取る戦略を分析する研究を進めたという。
「シミュレーターがどれだけ優れていても、実機と動作が違えばロボットは正しく歩けない。動力学モデルと実機を正確に合わせることが重要だ」
その後、パク教授チームの研究の基盤となったのが、MITのキム・サンベ教授が提案した「準直駆動(QDD)」アクチュエーターだった。パク教授は「QDDはアクチュエーター部分の非モデル化ダイナミクスを軽減し、Sim-to-Realの問題を大きく緩和した」と説明した。
高減速機は摩擦やローター慣性が大きいが、こうした要素は多くの場合モデル化に反映されていなかったため、シミュレーターでは動いても実機では動かないという問題が頻繁に発生していた。

発表ではKAISTの壁登りロボット「マーベル」も紹介された。このロボットは電磁石ではなく永久電磁石を足に搭載している。スイッチングの際だけ電流が必要で、電力消費が少なく、スイッチング速度もわずか0.03秒と非常に速い。
8kgのロボットが50kgの吸着力で鉄製構造物をよじ登り、最大登坂速度は毎秒0.7mに達する。脚付きの月面探査ロボットの中では世界で最も速い水準であり、造船所や産業施設の点検現場などでの実用化の可能性が高く、学生による起業にもつながっている。
パク教授はまた、従来のMPC(モデル予測制御)の構造的な限界についても指摘した。「MPCは、任意のタイミングで接触力を発生させられるという仮定のもとに動作するが、実際のロボットは隙間を踏んだり、磁石が付かない素材に接することもある」と説明した。
四足歩行ロボット「ハウンド」の研究紹介も注目を集めた。初期の強化学習ベースの制御では、最大速度が毎秒5.16mに留まっていたが、決定的な問題があった。多くの物理エンジンではトルクと回転数の最大値しか入力できず、実際のモーター特性を反映できなかった。
研究チームはこの楕円形の可動領域を強化学習環境に追加し、ハードウェアの変更なしで速度を0.5m/s引き上げた。決定的なブレイクスルーは「ハウンド2」で現れた。モーター制御装置を変更したところ、最大速度が13.03m/s(時速46.9km)に達したのだ。
パク教授チームは、強化学習とMPCの限界を超えるため、最近では「フローマッチング」ベースの生成モデルを制御に導入している。フローマッチングのプロセスに微分可能な物理シミュレーターを直接組み込み、動力学を満たすモーションを生成できるようにした。
この方式では参照データなしでも、フローマッチングモデル単独でロボットを動かすことができる。データセットに存在しないプッシュリカバリーや歩行パターンの切り替えも自然に発現し、ヒューマノイドのモーションデータまで適用範囲を広げる実験も進めている。
パク教授は「ハードウェアも重要、アルゴリズムも重要。それぞれの技術が個別に進化してきたが、今はそれを組み合わせるべき時だ。四足歩行ロボットで先にハードウェアとソフトウェアの相乗効果が得られ、今はそれをヒューマノイドへと移している」と総括した。
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