
高市早苗首相とイ・ジェミョン(李在明)韓国大統領が10月末のアジア太平洋経済協力会議(APEC)を機に開いた初の日韓首脳会談は、両首脳が相互に肯定的な評価を示すなど良好な出発を印象づけた。しかし、その一方で、両国の軍当局間では不協和音が生じつつある。
高市首相は11月7日、衆議院予算委員会でイ・ジェミョン大統領について「問題意識を共有できるリーダー」と語り、建設的な対話相手として評価した。10月30日の首脳会談でも両首脳は未来志向の関係構築に合意、高市首相は柔軟な外交姿勢を見せ、韓国の国旗に頭を下げて礼を表する場面もあった。イ・ジェミョン大統領も会談後、「非常に良い印象を受け、心配はすべて消えた」と述べた。
両首脳間の雰囲気は良好で、外交筋の間では「シャトル外交」が高市政権下でも早期に再開される可能性があるとの期待も高まっている。
一方で、軍当局レベルでは異なる動きが見られている。日本の複数メディアによれば、韓国空軍の特別飛行チーム「ブラックイーグルス」は11月中旬から下旬にアラブ首長国連邦(UAE)のドバイで開催される国際エアショーに参加するにあたり、沖縄県の航空自衛隊基地に立ち寄って給油を受ける計画だったが、日本側はこれを拒否したという。理由は、同チームが最近、島根県竹島(韓国は「独島」と呼んで実効支配している)上空を飛行した事実があるためだとされる。
この対応を受け、韓国国防省は11月5日、在韓日本大使館を通じて、13〜15日に東京で開催される「自衛隊音楽祭」への韓国軍楽隊の参加を見送る方針を伝達した。この音楽祭は、9月の日韓国防相会談で人的交流活性化の一環として合意されていた行事だ。
韓国側は不参加の理由を公式には明かしていないが、軍内部では日本による給油支援の拒否に対する「比例的対応」とみなされている。これに加え、11月予定されていた日韓両海軍による合同捜索・救助訓練も一時中止となった。これは新型コロナウイルスの影響で一時中断されていた訓練の再開を目指していたものだった。
現時点で両国の軍当局は、こうした摩擦が外交的対立に発展しないよう努めているが、もともと日本側が竹島について持ち出しているだけに、今後の展開次第では関係が再び悪化する可能性があると懸念されている。
特に注目されるのは、2026年2月22日の「竹島の日」行事だ。島根県はこの行事に閣僚級の出席を政府に要望しており、赤間二郎・領土問題担当相は「検討したい」と応じている。島根県は2005年に条例を制定し、翌2006年から毎年記念式典を開催している。日本政府は2013年以降、韓国の反発を考慮し、政務官級の出席にとどめてきた。
しかし高市首相は2025年9月、自民党総裁選の討論会で「閣僚が堂々と竹島の日に出席すべきだ」と述べ、韓国の反応を気にすべきではないとの立場を示していた。
首脳間のスタートは良好だったものの、今回の軍事面での摩擦が、今後3カ月の間に外交的な対立に発展する可能性も否定できない。特に竹島の日行事に閣僚が出席すれば、日韓関係が再び「冷却化」する可能性もある。
韓国・慶尚南道大学極東問題研究所のチョ・ジング日本研究センター所長は「両国関係は常に潜在的な対立要因を抱えている。特に高市首相の政治的スタンスを考えると、楽観視するのは危険だ」と警鐘を鳴らした。
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