
トランプ米大統領が、北朝鮮のキム・ジョンウン(金正恩)朝鮮労働党総書記との会談のために韓国訪問の日程を延長し、北朝鮮訪問まで可能だと発言した。実際に訪朝が実現する可能性は高くないが、キム総書記の「決断」次第では、トランプ大統領が江原道元山にある大規模リゾート「元山葛麻海岸地区」を訪れる可能性もあるとの見方が浮上している。
トランプ大統領は10月27日、アジア歴訪の最初の訪問国であるマレーシアから日本へ向かう専用機内で記者団の質問に答える中で、「キム総書記と対話できれば本当にうれしい」と述べ、必要であれば韓国での滞在日程を延ばす考えを示した。
特にトランプ大統領は「私は韓国にいるので、すぐそちら(over there)へ行ける」と述べ、状況によっては訪朝する意向も示唆した。
この発言が北朝鮮との水面下の接触や非公開のやりとりを通じて、一定の共感を形成した上で出たものかどうかは定かではない。また、トランプ大統領が2019年6月30日の板門店での緊急会談で、軍事境界線(MDL)を一時越えて北側地域に立った経験を踏まえ、今回の訪朝の可能性を示したとも考えられる。
トランプ大統領の発言が「キム総書記に会いたい」というレベルから、韓国滞在の延長や訪朝の可能性にまで具体化したことから、米朝間で何らかの意思疎通があった可能性も、慎重ながら取り沙汰されている。「そちらへ行ける」という発言は、板門店で会うという意味よりも、自らキム総書記のいる場所へ行くという趣旨と解釈され得るからだ。
特に、米国側が30日のトランプ大統領の出国予定とは別に、韓国・金海空港の滑走路の使用を韓国側に要請したという話も出ており、訪朝時に飛行機を使用する意図と受け取れる部分だ。
板門店を除けば、米朝首脳の会談場所として有力なのは元山葛麻海岸観光地区が挙げられる。北朝鮮は2025年7月にこの地を開場し、世界水準のリゾート施設を備えており、国際会議の開催も可能だと宣伝してきた。
トランプ大統領も、1月20日の公式就任直後に「北朝鮮には多くのコンドミニアムを建設できると考えている」と述べ、政権1期目から注目していた北朝鮮の「海岸リゾート開発」に今も関心を持っていることを明らかにしていた。これは米朝協議の結果次第では、米国の対北朝鮮投資が可能になるという意図とも受け取られた。
また、イ・ジェミョン(李在明)韓国大統領が8月末の韓米首脳会談で「北朝鮮に“トランプ・ワールド”を作ってゴルフができるようにしてほしい」として「ピースメーカー」(平和の仲介者)としての役割を求めると、トランプ大統領は喜んで応じ、依然として北朝鮮とのビジネスに関心を示した。
経済発展を必要とする北朝鮮としても、このような構想を全面的に拒む理由はない立場だ。実際、キム総書記は2025年の元山葛麻海岸観光地区の開場を手始めに、2026年にはさらに多くの観光地を各地に建設する構想を明らかにしている。
北朝鮮がキム総書記―トランプ大統領間の「親交」と、米朝関係を分けて見るという観点で対米外交を進めている点も注目される。北朝鮮としては、両首脳の会談が直ちに「非核化協議の再開」を意味しないという名分を掲げながらも、米国との関係を必要以上に悪化させない外交を展開できるからだ。
トランプ大統領はアジア歴訪期間中、北朝鮮に対して継続的に会談を呼びかけ、「核保有国」認定に関する発言や、対北制裁の緩和の可能性を示唆し、北朝鮮を動かそうとしている。
だが北朝鮮は、対米外交の責任者であるチェ・ソニ(崔善姫)外相を26日にロシアへ派遣し、米国との意味ある接触には関心がないというシグナルを送った。特にキム総書記が9月末に「米国は非核化という幻想を捨てるべきだ」と宣言したことから、トランプ大統領の口から「非核化撤回」に関する発言が出てくるのを待った後でなければ動かないとの見方が、依然として有力だ。
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