2025 年 12月 7日 (日)
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ダフ屋の取り締まりより「技術革新」…規制の逆説に囚われた「K-チケット」市場 [韓国記者コラム]

韓国のチケット予約市場は、ダフ屋ではなく古い認識や規制と戦わなければならない――こんな矛盾した状況に置かれている=ClipartKorea(c)KOREA WAVE

K-カルチャーのブームにより、韓国国内の公演市場が爆発的に成長する中で、人気公演のチケットは予約開始と同時に完売する「ピケッティング(血の出るような争奪戦)」が日常となっている。しかしその裏では、マクロボットでチケットを根こそぎ買い占める「違法ダフ屋」との見えない戦争が繰り広げられている。

これを受けて政府は「処罰強化」という剣を抜いたが、専門家は問題の本質を外れたアプローチである可能性があると指摘する。

2025年9月に韓国ベンチャー創業学会が発表した報告書は、技術で武装したダフ屋を処罰だけで抑えようとするやり方は、かえって取引を非公式化させてしまう「規制の逆説」を生むだけ。根本的な解決にはならないと分析した。海外では技術によって信頼を構築して健全な生態系を作っているのに対し、韓国では技術がダフ屋ではなく、古い認識や規制と戦わなければならないという矛盾した状況に置かれているのだ。

◇「パートナーシップ」で市場を育てるグローバルプラットフォーム

グローバルな二次チケット市場は、2030年には約51億ドル規模に成長すると見込まれている。この成長の中心には「技術による信頼構築」がある。日本、アメリカ、ヨーロッパなど主要国では、むしろ規制環境が技術革新を促進し、市場の透明性と安全性を高める触媒となっている。

アメリカでは、マクロやボットを使った大量購入や転売行為を違法とする「BOTS法(2016年)」施行以降、AIによる詐欺検出や機械学習(ML)によるボット防御技術が高度化された。

韓国の二次チケット市場ではSNSや個人間取引が横行しており、そのために消費者被害が拡大する構造となっている=ClipartKorea(c)KOREA WAVE

日本では「転売禁止法(2018年)」に基づき、エスクロー決済や強力な本人確認(KYC)技術の導入が義務付けられた。額面超過の販売を厳しく禁じているドイツやフランスでは、動的QRコードやバーコード検証技術により偽造や改ざんを根本から防いでいる。

このように技術によって確保された信頼は、主要なスポーツリーグや主催者との公式パートナーシップへとつながった。米国イーベイ傘下にあるイベントチケット売買サイト「スタブハブ(StubHub)」はMLBの「公式再販パートナー」となり、信頼を獲得し収益を共有する代表的な共存モデルを築いた。「SeatGeek」とNFL、「Viagogo」とヨーロッパのサッカークラブとの協力関係のように、今や公式パートナーシップはグローバルスタンダードとなっている。

◇硬直した規制と画一的な認識

一方、韓国国内の二次チケット市場の現実は異なる。制度的な基盤が不十分で、グローバル市場と比べて生態系の発展が遅れており、安全装置のないSNSや個人間取引が蔓延し、それによる消費者被害が急増している。

実際、インターネット詐欺被害の中で「チケット・商品券詐欺」は2025年上半期だけで3万件を超え、1位となった。こうした詐欺取引は、ほとんどがネイバーカフェやX(旧Twitter)など、エスクローのような保護機能がないチャネルで発生しており、健全な市場成長を妨げる要因とされている。

こうした被害の根本原因は、チケット供給構造自体の不均衡にあるという指摘もある。ダフ屋の存在は、限定的な供給、低価格政策、事前割り当ての慣行など一次市場の構造的な限界から生じているにもかかわらず、この問題が二次市場の責任として押しつけられている傾向があるのだ。

その結果、二次チケット取引プラットフォームが既存の非公式な取引を公式かつ安全なルートに転換し、市場の透明性を高めて消費者保護に貢献できるにもかかわらず、二次市場に対する社会・政策的認識は依然として従来の「違法ダフ屋市場」の延長線上にとどまっている。

このように、二次市場を否定的に見る社会的認識は、規制のあり方にもそのまま表れている。問題が発生すると「処罰強化」と「市場統制」へと向かう従来型の規制モデルも、新技術の導入や産業革新の障害となっている。このような環境は、国内プラットフォームが技術開発に投資するよりも、規制リスクの回避に注力させる結果となり、最終的にはグローバルプラットフォームに市場の主導権を譲るという「OTT(Over the Top)規制の逆説」を再現する恐れを生んでいる。

K-カルチャーの未来のために、すべての利害関係者が参加・協力し、共存できる二次チケット市場のルールを作らなければならない=ClipartKorea(c)KOREA WAVE

◇「生態系ベースのアプローチ」でK-カルチャーの未来価値を高めよ

では、現在の限界を克服し、K-カルチャーの成長を支えるための解決策とは何か。

学界では、二次チケット市場を「取り締まりと処罰」の枠組みから「健全な生態系の構築」へとフレームを転換すべきだという声が高まっている。特定の主体による一方的な規制ではなく、すべての利害関係者が参加し、技術と協力によって問題を解決する「生態系ベースのアプローチ」への転換が必要だというのだ。

そのためには、韓国政府が不要な重複規制を解消し、規制体系を整備するとともに、二次チケット取引プラットフォームをはじめとする革新技術を実験・検証する「規制サンドボックス」の扉を開くべきだという意見がある。

また、産業界は技術革新に積極的に投資し、取引の安定性と市場の信頼性を確保し、学界は実証的な研究を通じて政策立案の根拠を提供すべきだという声もある。

K-カルチャーの未来のためには、政府からプラットフォーム、主催者、消費者団体、学界に至るまで、すべての利害関係者が参加する「協力的ガバナンス」によって、共存のルールを作っていく努力が求められる時期に来ている。【MEGA News ペク・ボンサム記者】

(c)KOREA WAVE

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