
韓国で「チキン1羽3万ウォン(約3141円)」が現実のものとなっている。配達アプリの手数料負担を理由に始まった「価格自律制」が全国に広がり、フランチャイズ加盟店が自由に価格を決める動きが拡大したためだ。
業界によると、キョチョンチキンのソウル地域加盟店のうち9割以上が、本部の「推奨価格」より販売価格を引き上げた。店頭価格は据え置きながらも、配達アプリ上では平均2000ウォン(約209円)高く設定する例が多い。店舗や地域、アプリごとに価格が異なり、消費者は混乱と負担を強いられている。
代表的なメニューである「ハニーコンボ」は現在2万5000ウォン(約2617円)、bhcの「クァサクキングコンボ」は2万7000ウォン(約2827円)、BBQの「マラホット」は2万8000ウォン(約2932円)。配達料(3500ウォン=約366円)を含めると3万ウォン(約3141円)を軽く超える。
◇価格自由化が広がるフランチャイズ業界
昨年末プラダックが最大1000ウォン(約105円)、4月にはジコバが全メニューを2500ウォン(約262円)値上げ。2025年3月以降は「店舗価格」と「配達価格」を分ける「二重価格制」が登場し、bhcが5月に加盟店へ実質的な価格決定権を委譲する「自律価格制」を導入。続いてキョチョンが「店主価格制」を導入し、実質的な“野放し値上げ”が進んでいる。
国家データ庁の統計によると、2025年9月の消費者物価指数は前年同月比2.1%上昇。特に外食物価は3.4%上昇と平均を上回った。
韓国ブロイラー協会によれば、主にチキンに使われる9~10号鶏の価格は2023年3月に5308ウォン(約556円)まで上昇後、同年11月には2692ウォン(約282円)まで下落。現在(10月初旬)は3460ウォン台(約362円)と安定している。にもかかわらず、チキン販売価格の上昇幅は原料費を大きく上回っている。
フランチャイズ本部と配達アプリ企業の売り上げも増加している。リーダーズインデックスの分析では、2020~2023年の間にチキンフランチャイズの本部売り上げは約33%増加。一方、加盟店の平均売り上げはむしろ微減した。
「配達の民族」を運営する「優雅な兄弟たち」の売り上げは2022年の2兆9471億ウォン(約3086億円)から2023年には4兆3226億ウォン(約4526億円)へ増加。クーパンイーツサービスも前年比137%増を記録した。
◇加盟店主と本部の対立も
加盟店主団体の交渉権強化を定めた公正取引委員会の制度改正や、いわゆる“差額加盟金”問題も業界の火種になっている。
「加盟事業取引の公正化法」第12条では、本部が加盟店の価格設定を不当に制限することを禁じている。各社が「価格自由化は合法」と主張する根拠だ。
業界関係者は「コロナ期以降、配達アプリの普及に対応して店舗ごとの価格調整を導入するケースが増えた。法的に強制できないため、今後も店主の裁量による価格設定は続くだろう」と語った。
一方、bhcやBBQなど大手フランチャイズは「現時点で追加値上げの予定はない」としているが、実際には“3万ウォンチキン(約3141円)”がすでに日常化し、ひとりで楽しむ「ホンチメク(一人チキン&ビール)」すら贅沢な選択になりつつある。
(c)news1