国民年金…李「保障」vs尹「持続」
韓国大統領選(3月9日)まで2週間を切りました。主要候補らが打ち出す政策によって、韓国での暮らしぶりも大きく変わります。各候補の経済公約を分析してみました。(最終回)
◇「働く老人」問題解決/公的年金の持続可能性
与党「共に民主党」のイ・ジェミョン(李在明)候補と保守系野党「国民の力」のユン・ソンヨル(尹錫悦)候補のいずれも年金改革を公約に掲げたが、イ候補は「働く老人」の国民年金受給額が少ないという問題などを解決することに改革の重点を置いた。一方、ユン候補は枯渇の危機に直面している公的年金の持続可能性に焦点を合わせ、統合的年金改革案をまとめるという考えだ。
しかし、両候補とも年金受給年齢の引き上げや保険料率の引き上げなど、年金財政の健全性を向上させる具体的な案は示さなかった。ただ、ユン候補は基礎年金の支給額を1人当たり月30万ウォンから40万ウォンに引き上げるという公約を出した。
韓国マニフェスト実践本部が2月16日に発表した「第20代大統領選挙マニフェスト比較分析質疑答弁書」によると、イ、ユン両候補とも国民年金改革を検討するという公約を出した。急速な高齢化で、国民年金が枯渇の危機に直面しているだけに、次期政府での改革は避けられないという認識だ。
国会予算政策処が2020年に発表した「4大公的年金長期財政展望」報告書によると、国民年金は2039年に赤字に転落し、2055年には枯渇する危機に直面している。保健福祉省が2018年に発表した「国民年金第4次財政推計結果」によると、現在の制度が維持される場合、1991~92年生まれが国民年金を受領する満65歳になるとき、年金を支給するための金は少なくとも基金内にはない。
ユン候補は大統領直属の年金改革委員会を運営し、持続可能な年金保障のための改革を推進すると明らかにした。公的年金を基礎年金、退職年金、個人年金と一括して改革するという。特に、国民年金と公務員年金との関係を再び検討する計画だ。
イ候補も年金改革委員会の運営を約束したが、焦点は「所得保障機能の強化」に合わせたという点で差別化される。イ候補は先月、「小確幸(小さいけれども確かな幸せ)シリーズ」公約の一環として、国民年金受給対象の高齢者が働いて得た所得のために年金が削減されることを防ぐと明らかにしていた。
年金について一部では、財政の健全性を強化する案として▽定年延長、現在の年金受給年齢を65歳から67歳に引き上げる▽現行の国民年金保険料率を9%、公務員年金水準を17%に引き上げる――などが取りざたされているが、これについては両候補とも直接言及しなかった。
◇所得下位70%の障害者に拡大/報勲給与金を所得認定から除外
脆弱階層を対象にした年金については、両候補が改革の重心を互いに違う場所に置いた。イ候補は、一部の重症障害者にのみ支給する障害者年金の支給対象を、所得下位70%の障害者に拡大すると明らかにした。ユン候補は65歳以上の従軍経験者「参戦勇士」に対する基礎年金支給の際の報勲給与金を所得認定額から除外する考えだ。
雇用保険については、イ候補は保険適用対象の拡大と保障性を高める公約を提示した。具体的に▽全国民雇用保険の早期実現▽労使合意に基づく求職給与の拡大――などを提示した。一方、ユン候補は▽雇用保険の死角地帯の解消▽雇用保険事業の構造調整▽雇用保険の財政健全性強化を推進――などとした。
健康・産業災害保険に対しては両候補ともに保障性を強化するという立場だ。特にイ候補は、労働災害保険の対象を全国民に拡大すると明らかにした。これは与党が産業災害補償保険法改正案を発議し、全国民労災保険加入を推進したことによるものだ。「先補償後承認制」案も提示したが、療養・休業給与などを先に支給した後に精算するのが骨子だ。
一方、国家財政政策に対する見解でも、両候補の間に大きな差が確認された。イ候補は、韓国の国家財政が主要国に比べて安定的だという前提の下、積極的な財政支出の必要性を強調した。高齢者・患者・障害者・幼児・乳児の5大ケア国家責任制をはじめとする社会セーフティネットの強化のために財政支出を増やしていくとした。
これに対してユン候補は、中長期的な財政健全性の管理を強調した。ユン候補は「新型コロナ対応の財政支出拡大は推進するが、克服後の財政準則導入、独立的財政委員会運用で持続性を確保する」「財政支出構造調整のために全省庁が成果を管理する」と明らかにした。
(おわり)
「大統領候補たちの経済公約」はMONEY TODAYのユ・ソニル、ユ・ヒョソン、ユ・ジェヒの各記者が取材しました。