
韓国政府が中国人団体観光客に対し期間限定のビザ(査証)免除措置を施行した。ただ、期待するほどに観光需要を呼び込み、経済活性化につながるかについては懸念も出ている。専門家は「団体観光中心の政策では限界があり、自由旅行客の拡大と観光産業の質的転換が必要」と指摘する。
9月29日から始まった今回の措置により、2026年6月30日まで文化体育観光省または在中韓国公館が指定する旅行会社を通じて募集された3人以上の中国人団体客は、15日以内であれば無査証で韓国全域を旅行できる。新型コロナ禍以降に落ち込んだ訪韓観光市場を立て直し、内需振興を狙う政府の戦略的判断だ。
政府はこの措置によって2026年上半期までに中国人観光客を約100万人追加で誘致できると見込む。韓国観光公社によると、コロナ前の2019年には602万人だった中国人訪韓客は、2023年には202万人に減少したが、2024年には約460万人まで回復している。
韓国銀行の2023年報告書によれば、中国人観光客が100万人増えると観光収入は約2兆5600億ウォン増加し、国内総生産(GDP)成長率を0.08ポイント押し上げる効果があると推定されている。宿泊・飲食・交通・免税店などへの波及効果が高い点も注目される。
文化体育観光省の調査によると、航空運賃を除く中国人観光客1人あたりの平均消費額は224万ウォンで、アジア諸国の中で最も高く、日本人観光客(111万ウォン)の2倍を超える。
韓陽大学観光学部のキム・ナムジョ教授は「中国人訪韓客のうち20~25%が団体客だ。ビザ申請の煩雑さで旅行を諦めた層を呼び戻す効果があり、政府の追加100万人誘致目標も現実的だ」と評価した。そのうえで「団体客は個人客より支出額は少ないが、地方消費を喚起し観光・宿泊・交通業界にプラスとなる」と述べた。
一方、カトリック大学のヤン・ジュンソク教授は「外交・文化摩擦の影響でビザを免除しても訪韓が増えるとは限らない。仮に来ても中国人経営の飲食店や商店に集中する傾向があり、期待ほど経済波及効果は大きくない」と懐疑的な見方を示した。さらに「団体客の消費規模は小さく、GDP押上効果は統計上の推計値ほど出ない可能性が高い」と指摘した。
また、団体旅行客の急増により、低価格パッケージ商品の乱立や特定商圏への集中、地域偏在など、過去に問題となった副作用が再燃するとの懸念も出ている。
専門家は「短期的な誘致策だけでは持続的効果は難しい」とし、自由旅行客(FIT)中心の戦略、地域特化コンテンツの開発、観光地の受け入れ能力管理など、構造的な改革が必要だと強調した。観光業界関係者も「中国人観光の潜在需要は依然として大きい。今後は無査証政策に加え、オンラインプラットフォームやコンテンツ面での競争力強化が再訪を呼ぶ鍵になる」と述べた。
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