
韓国仁川市彌鄒忽(ミチュホル)区にあるマンションの外壁が2024年7月、豪雨と強風によって崩れ落ちた。崩壊した壁材が都市ガスの配管を直撃し、ガス供給が一時中断される事態となった。しかし1年以上が経過した2025年10月現在も、外壁は崩れたまま放置されている。
このマンションは、韓国で大規模なチョンセ(敷金一括前払い型賃貸)詐欺事件を起こした“建築王”一味が所有していた物件の一つで、被害世帯は約70戸に上る。入居者の一人は6年前、家族とともにこのマンションに入居したが、いわゆる「名義貸し大家」によって9300万ウォン(約1000万円)の保証金を失った。
ガス管は修理されたものの、外壁の崩落部分はそのままで、昨冬には結露が発生。住民らは冷気を防ぐために厚手の毛布を壁に掛けるなど、応急的な対処を続けている。この入居者は「強風のたびに外壁がまた落ちるのではと怖い。修理の話も進まない」と訴える。
70世帯のうち約5~6戸を除いて競売が完了しており、約半数は韓国土地住宅公社(LH)が落札、残りは民間落札者に渡った。しかし所有者が確定していない物件も多く、住民が自費で修繕することは難しい。当該入居者は「先に修理して後から入ってくる人に費用を請求しようという話もあったが、誰も出資しようとしなかった。事故がなかったから、結局1年も放置されている」と語った。
チョンセ詐欺被害者の支援を目的に2024年9月に改正された「チョンセ詐欺被害者保護法」第28条の2では、地方自治体が被害住宅の安全管理や監督、公的委託管理、費用支援などを条例で定めることができると規定されている。
しかし、国会交通安全委員会所属のポク・ギワン議員(共に民主党)の調査によれば、全国17の広域自治体のうち、12自治体がこの「被害住宅の安全管理および監督」条項を反映していないという。仁川、大邱、大田、蔚山、世宗、江原、忠北、全北、慶北、慶南、光州、済州などが該当する。
自治体の一部では「地方では被害件数が少なく、条例改正が難しい」「民間住宅の修繕に自治体が介入するのは難しい」などの理由が挙げられている。
不動産経済研究所のキム・インマン所長は「被害者は国家制度を信じて契約した。詐欺を防げなかった政府や自治体にも明確な責任がある。被害発生後の対応や修繕も国や地方自治体が責任を持ってやるべきだ」と強調した。
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