
韓国の大手通信3社(SKテレコム、KT、LGユープラス)が「AI企業への転換」を掲げて邁進するなか、相次ぐハッキング事件がその勢いに水を差している。顧客情報流出や不正決済などの事故で信頼が揺らぎ、巨額の損失も発生。AI戦略の根幹となるデータ安全性への不安が高まっている。
4月にはSKテレコムで約2300万人分の個人情報が流出。国民のほぼ半数が被害を受けた形となり、同社のブランド信頼度は急落した。同社はUSIM(SIMカード)交換、違約金免除、通信料減免などの補償策を打ち出したが、個人情報保護委員会から約1300億ウォンの課徴金を科される見通しで、財務的負担は甚大だ。
KTでも8月、無断小額決済事件が発覚。基地局管理やサーバー運用の脆弱性が露呈した。外部専門機関の調査で自社サーバーへの侵入痕跡も確認され、行政処分や追加補償が避けられない見通しだ。
米セキュリティ専門誌「FRAKマガジン」は、LGユープラスの内部管理用アカウント情報やソースコードが流出したと報じた。同社は「事実無根」と否定しているが、顧客の不安は払拭されていない。
通信3社はいずれもAIを経営の中心に据えている。AIが扱う膨大なデータこそが新たな競争力の源泉だが、同時に情報保護は企業の生死を分ける“信頼の基盤”でもある。
SKテレコムは情報保護専門人員を2倍に増やし、システム強化への投資を拡大。KTはAI監視体制の高度化と海外セキュリティ企業との連携を推進。LGユープラスは2027年までに全社アプリへ「ゼロトラスト」セキュリティを導入する方針を示した。
AI安全研究所のキム・ミョンジュ所長は「AIは個人の生活に深く関わる技術であり、プライバシー侵害のリスクも大きい。企業はAIを推進する前に、セキュリティ体制の高度化を最優先課題とすべきだ」と指摘する。
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