
韓国軍当局が、最近15年間の北朝鮮による挑発事例を国会に報告する際、2024年に32回にわたり計7000個以上が散布された「汚物風船」を当初含めず、後になって追加していたことが分かった。韓国領土と国民に被害を及ぼす行為である「挑発」の定義を、政権の対北朝鮮政策に合わせて恣意的に変えているのではないかとの批判が出ている。
合同参謀本部は、「2008年から2025年7月までの北朝鮮の挑発全件」を報告するよう国会から求められ、局地挑発323件・核実験6件・ミサイル挑発137件と報告した。
ただ、この中には汚物風船は一切含まなかった。
北朝鮮は2024年5〜11月、韓国側の対北朝鮮ビラ散布に対抗する形で32回にわたり汚物風船を無差別に散布した。ソウル全域を含む全国に落下し、物的被害に加え、国民に心理的不安を与えた。GPSやタイマーを装着し、龍山の大統領執務室上空で破裂させるなど、生化学兵器や小型爆弾に転用可能な意図も示していた。
韓国軍は2024年7月には汚物風船を「明白な挑発」と規定し、対抗措置として対北朝鮮拡声器放送を再開していた。
ところが今年の資料では一転して記録から除外。指摘を受けてようやく「挑発には当たる」と訂正した。
韓国で政権交代後、政府が対北朝鮮ビラを規制し、拡声器放送も中断するなど融和姿勢を見せる中、軍の判断が揺れたのではないかとの見方がある。
軍が最初に報告した局地挑発323件は、地上25件・海上280件・空中12件・電磁波6件に分類。汚物風船は「民間が主体」とする北朝鮮の主張を理由に、軍事挑発に含めなかった可能性がある。
だが、軍自身が昨年の「局地挑発訓練」において、汚物風船を想定シナリオに盛り込んでいた。
統合防衛法や軍事用語辞典でも、挑発は「国民や領域に危害を加える一切の行為」と定義されており、汚物風船も局地挑発に含められる余地がある。
保守系野党「国民の力」のカン・デシク議員は「国民に深刻な被害を与えた北朝鮮の挑発を分類すらできないのは職務怠慢であり、安保の空白につながる」と批判。「挑発の類型を明確に定め、管理してこそ、軍が効果的に対応し、自衛権を行使できる」と強調した。
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