
韓国で未登録の違法民泊をめぐる混乱が拡大している。Airbnb(エアビーアンドビー)が自発的に未登録宿泊施設を締め出したものの、これら施設の多くが別の予約サイトに移動して営業を続けており、いわゆる「風船効果」が生じている。政府は取り締まりと制度整備で市場秩序を確立すべきだが、対応は場当たり的で基準も不明確だとの批判が高まっている。
文化体育観光省が国会に提出した資料によると、未登録宿泊施設の摘発件数は毎年数百件に達する一方、合法的な登録に転換された例は2023年21件、2024年27件にとどまった。2022年までは登録転換の実績すら集計されず、成果管理の欠如が露呈した。取り締まり件数も2021年681件から2022年272件に急減し、2023年に505件へ増加したものの2024年には256件に減少するなど一貫性を欠いている。
根本的問題は制度と管理体制が細分化されている点だ。違法宿泊施設の取り締まりは各自治体が担い、地域ごとに執行の強度や基準が異なる。さらに「都市民泊業」(文化体育観光省・観光振興法)、「韓屋体験業」(文化体育観光省)、「農漁村民泊」(農林畜産食品省・農漁村整備法)、「生活型宿泊施設」(国道交通省・建築法)、「ホステル業」(文化体育観光省)といった形で所管省庁も複雑に分かれており、統一的な基準が存在しない。
Airbnbは10月16日から韓国内の全宿泊施設に営業申告を義務化し、2026年1月以降は未申告施設の予約を禁止する方針を打ち出した。だが、締め出された違法疑惑施設の多くは登録に転換せず、ブッキングドットコムやアゴダなど他のオンライン旅行代理店(OTA)、さらには規制が緩い短期賃貸プラットフォームや不動産アプリへ流れている。
韓国観光公社のモニタリングによれば、2024年に違法疑惑が最も多かったのはAirbnb(332件)だったが、方針発表後の2025年上半期には34件まで減少。一方、ブッキングドットコムは357件、アゴダは41件に上った。ある民泊事業者は「以前はグローバルOTAも営業申告証を求めていたが、Airbnbが義務化を始めると他社はむしろ要求しなくなった。これが風船効果だ」と指摘する。
文化体育観光省は「通信販売仲介業者は公正取引委員会所管の電子商取引法の対象であり、文体部には直接の規制権限がない」と説明し、違法疑惑施設を自治体に通知するにとどまっている。観光公社も「宿泊プラットフォームに事業者登録証の確認義務を課す制度がなく、常時監視体制を構築するのは困難」と述べる。
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