2025 年 9月 21日 (日)
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[KWレポート] 「36分に1人が命を絶つ国」韓国社会の未来に迫る影 (1)

韓国慶尚北道のある村で、ケース管理をしている基礎精神健康福祉センターの職員。写真の住宅は、記事に登場する自殺未遂者とは関係のない場所(c)MONEYTODAY

韓国では毎年、約1万1000人の国民が自ら命を絶っている。2011年に自殺予防法を制定し、国家レベルでの対応に乗り出したものの、「経済協力開発機構(OECD)自殺率1位」という不名誉は依然として続いている。

自殺を防ぐためのセーフティネットは、体系的なシステムの不在や予算・人材の不足、さまざまな縦割りの弊害により、まともに機能していない。自殺予防の現場からは「自殺問題が事実上、放置されている状態だ」という嘆きの声が上がっている。

「一人で(自殺高リスク群を)23人も担当しています。昼食を抜くのは日常茶飯事です」(慶尚北道のある基礎精神健康福祉センターの臨床心理士キム氏)

「待遇が悪いため長く勤務できません。ただ、担当者が頻繁に変わると、相談者に悪影響を与えるしかない」(首都圏のある自殺予防センターの臨床心理士チョン氏)

自殺予防の最前線が崩壊寸前だ。慢性的な人手不足により過重労働を強いられ、劣悪な待遇によって人材の流出が深刻な問題となっている。現場からは、韓国政府が達成不可能な目標を設定して現場の人員を崖っぷちに追い込んでいるという嘆きの声が上がっている。

早急に改善策を見つけなければ、自殺予防のセーフティネットそのものが崩れてしまう――こんな懸念が高まっている。

◇「毎日が戦場、昼食を抜くことがよくある」

MONEYTODAYの同行取材に応じた臨床心理士キム氏は「ケース管理」の業務から一日を始めた。

ケース管理とは、カウンセリングによって自殺高リスク群の健康状態を確認し、日常生活への復帰を支援する活動だ。市・郡・区単位の基礎センターの自殺予防チームの職員が担当する。

キム氏は慶尚北道のある村で相談者と面会した。その相談者には、カウンセラーや警察官に暴力をふるった前歴がある。訪問前のキム氏の顔には明らかな緊張の色が浮かんでいた。

「食事はきちんととっていますか?」「つらいことはありませんか?」「ご家族とは連絡を取っていますか?」

こう問いかけながら、相談者の状態を慎重に見守った。

その後、別の村に移動してさらに2人の相談者とも面会した。3人との面談にかかった時間は合計1時間30分。移動には2時間30分を要した。担当区域が広い山間部という特性上、移動に費やす時間が多い。

キム氏は最後の相談者と15分しか話せなかったことを気にしていた。もっと話したかったが、午後2時に予定されている薬物教育を実施するには、急いでセンターに戻らなければならなかった。薬物教育を担当できるのはキム氏しかおらず、他の職員に任せることはできない。

センターに戻ったキム氏がハンバーガーで昼食を済ませようとしたその時、電話が鳴った。相談の依頼だった。午後3時に相談予定が急きょ設定された。薬物教育の直後の時間帯だ。相談は基礎センターにおける最優先業務であり、他の仕事が山積みでも、それを後回しにして対応する。誰がどんな内容を持ち込んできても受け入れる。

キム氏が担当するケース管理の相談者は23人にのぼる。「エネルギーの消耗が激しく、毎日が戦場のようだ。昼食を抜くことが多い。家から弁当を持ってきて車の中で食べることもある」

(c)MONEYTODAY

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