
韓国の防衛・航空産業大手ハンファエアロスペースが欧州市場での「made in NATO」戦略を加速させている。ポーランド向け多連装ロケット「チョンム」の現地生産比率を高める一方、ドイツ国内に工場設立を検討している。背景には、欧州最大の防衛産業企業ラインメタルが造船業への進出を通じて陸海空を包括する「ワンストップ体制」構築に動いていることがある。
ラインメタルは米防衛大手ロッキード・マーチンと組み、航空防衛分野への展開を進めてきた。さらにドイツ北部ブレーメンを拠点とする造船企業リュルセンの買収を協議しており、軍艦建造能力を獲得すれば陸・海・空をすべてカバーできる体制となる。アルミン・パッペルガー最高経営責任者(CEO)は「海軍でも陸軍のようにワンストップサービスを実現したい」と意欲を示した。
こうした動きは、従来の地上兵器偏重からの脱却を意味する。将来の多領域作戦(陸・海・空・宇宙・サイバー)への対応力を高める狙いであり、EUの軍備拡張政策とも歩調を合わせている。EUはロシアのウクライナ侵攻の長期化や米国からの防衛費増額要求を受け、再軍備を加速。今月には総額1500億ユーロの「SAFE(共同兵器調達融資制度)」を発表し、その対象を「部品の65%以上を加盟国で生産した製品」に限定した。
この「バイ・ヨーロピアン」の潮流は、ハンファエアロをはじめとする韓国防衛産業にとっても現地化を避けられない状況をつくり出している。現代ロテムは主力戦車K2の一部を現地生産に切り替え、韓国航空宇宙産業(KAI)は欧州で戦闘機の整備・修理・点検(MRO)センターの設置を検討中だ。
防衛業界関係者は「韓国防衛産業の輸出拡大には現地化が必須だ。ハンファエアロは『made in NATO』の流れに合わせざるを得ない」と指摘した。
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