
北朝鮮は、米紙ニューヨーク・タイムズ(NYT)が報じた「米国が2019年に北朝鮮のキム・ジョンウン(金正恩)朝鮮労働党総書記の会話を盗聴しようと特殊作戦を実行したが失敗した」とのニュースについて、8日まで3日間公式反応を示していない。専門家は、北朝鮮が沈黙を守るのは「国境が突破された事実を認めることを避けるため」という見方とともに「米国との関係悪化を防ぐための戦略的判断」と分析している。
NYTによれば、米軍特殊部隊は当時の2回目米朝首脳会談を前に、原子力潜水艦から小型潜航艇に乗り換え北朝鮮沿岸に潜入。だが民間漁船と遭遇し、作戦露見を恐れて乗組員を射殺して撤収したという。
報道が事実であれば、北朝鮮当局が公式立場を出すことは「国境防衛と国民保護に失敗した」ことを認めるに等しく、体制維持の観点から困難だとされる。韓国・慶南大学極東問題研究所のイム・ウルチュル教授は「北が声明を出せば自らの失敗を公認することになる」と指摘した。
一方で、今回の報道が米朝対話に直接的な大きな影響を及ぼす可能性は低いとの見方も強い。トランプ米大統領がすでに「知らないことだ」と否定しており、北朝鮮の対応判断に影響したとみられる。
キム総書記が事件当時すでに把握していた場合、波紋は限定的だ。NYTは、特殊部隊撤収後に米国の偵察衛星が北朝鮮軍の活動急増を確認したと伝えており、作戦を感知していた可能性を示唆している。事実、キム総書記はその後もトランプ氏と2度会談している。
ただ、今回の報道で初めて事件を知った場合は北朝鮮内部に激震が走り、情報を隠していた関係者の処罰やキム総書記の警護強化につながる可能性がある。
また一部では、北朝鮮が米国の「敵対行為」を口実に対米圧力を強めるとの見方もある。作戦に投入されたのが、2011年にオサマ・ビンラディン氏を殺害した特殊部隊とされるだけに、北朝鮮が米国への不信感を増幅させる材料になるとの指摘も出ている。
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