
韓国の検察が「捜査・令状・起訴権」という強大な権限を長年一手に握ってきた結果、権限の濫用と人権侵害が繰り返されてきた。こうした構造的問題を是正するため、イ・ジェミョン(李在明)政権と巨大与党「共に民主党」が推進する検察改革が再び最大の政治テーマに浮上している。
政府・与党は9月7日、検察庁を廃止し、起訴を担当する「公訴庁」▽重大犯罪を扱う「重大犯罪捜査庁(重捜庁)」――の二つを新設する政府組織改編案を発表した。両庁は法務省と行政安全省がそれぞれ管轄する。施行までは1年間の猶予期間を設け、その間に首相室傘下にタスクフォースを置き、詳細を調整する。1948年に発足した「検察庁」という名称は78年で消える。
検察は本来、警察が送致した事件に法を適用し、処罰の方向を定めて裁判所に判断を求める役割を担う。しかし、捜査・令状請求・起訴を独占してきたことが、手続きの逸脱や政治的利用を招いた。政権交代期に特定勢力に有利な捜査を展開したとの批判、協力しない被疑者への恣意的な令状請求や圧力などが繰り返されてきた。
代表的な事例は2021年のユ・ウソン氏事件だ。脱北者を装ってソウル市職員になった容疑で起訴されたが、大法院(最高裁)は一部について検察の「公訴権濫用」を初めて認め、公訴棄却を言い渡した。また最近ではユン・ソンニョル(尹錫悦)前大統領の妻キム・ゴニ(金建希)氏をめぐる捜査と不訴処分が特別検察によって覆され、検察の不公正な扱いが国民的批判を浴びている。
こうした中、過去の改革は十分な成果を出せなかった。ムン・ジェイン(文在寅)政権下では検・警捜査権調整や高位公職者犯罪捜査処新設が進められたが、現場では手続き遅延が多発し、一般市民にしわ寄せが及んだ。警察と検察が互いに責任を押し付け合い、事件が宙に浮いたまま処理が遅れるという弊害も指摘される。
イ・ジェミョン政権の改革が国民に被害を与えない「実効的な改革」となるためには、権限縮小にとどまらず、公正な捜査と適法手続きを保障する制度的装置の確立が不可欠だとの声が強い。一方、金融・租税・麻薬など専門性の高い重大犯罪の捜査力をどのように維持するかという課題もある。
検察改革が繰り返される中で国民の疲労感は高まっている。イ・ジェミョン大統領は「敏感で重要な争点は十分に国民に知らせる公論化の過程を必ず経るべきだ」と強調しており、今回の改革が「空念仏」に終わらないか注目される。現職の検察官も「やるなら徹底的に、国民に被害が出ない方向で進めるべきだ」と語っている。
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