
北朝鮮がロシア戦場に派兵され死亡した軍人を追悼する新曲3曲を発表した。これは単なる追悼にとどまらず、若い世代を結集させるための“英雄化”戦略の一環との分析が出ている。
朝鮮中央テレビは8月22日、「朝鮮人民軍海外作戦部隊指揮官・戦闘員のための祝賀公演」を80分にわたり放送。冒頭ではキム・ジョンウン(金正恩)朝鮮労働党総書記が党中央委庁舎で開かれた表彰式で「追悼の壁」に掲げられた戦死者の肖像画に献花する場面が映し出された。
その後、平壌4・25文化会館での公演が始まり、国家斉唱や既存の宣伝歌に加え、初公開の『祖国の星々』『記憶しよう』『ただ勝利』が披露された。舞台の背後スクリーンには派兵兵士の戦闘映像や活躍を称える文言が映し出され、観客は涙を拭ったり抱き合って嗚咽する場面もあった。
編集映像では、2024年10月に北朝鮮軍がクルスク地域で雪中作戦を展開する様子や、今年元日にキム総書記が派兵兵士へ送った直筆手紙も紹介された。
専門家は、歌詞が犠牲兵士を「輝く星」として描き、「祖国はその犠牲を忘れない」「すべての記憶の中で永生は始まる」とするなど、明確に英雄視する意図を含んでいると指摘する。
また、北朝鮮は「追悼の壁」や映像制作にとどまらず新曲まで用意し大規模公演を実施。これは外部文化に馴染んだ“チャンマダン世代”(1980~90年代生まれ)やMZ世代(1980年代~2000年代初旬の生まれ)を意識した戦略とみられる。公演では子どもが観覧する様子と兵士の名前・勲章映像を交互に映し、次世代へのメッセージを強調した。
韓国・統一研究院のオ・ギョンソプ上席研究委員は「北朝鮮が追悼曲3曲を同時に発表したのは、派兵を英雄化する強い意思を示すものだ。特に外部文化に敏感な若い世代を対象に、歌を効果的な動員手段として活用した」と分析した。
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