2025 年 8月 26日 (火)
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北朝鮮、派兵戦死者「101人の顔」だけ公開…韓国政府は「600人」と推定

8月22日付労働新聞キャプチャー(c)KOREA WAVE

北朝鮮が初めてロシア派兵軍の戦死者の身元を公開した。101人の写真と名前を掲示した「追悼の壁」を設置したが、韓国の国家情報院が把握した戦死者数600人余りと比べ大きな乖離があり、北朝鮮が意図的に戦死者数を縮小して発表している可能性が指摘されている。

朝鮮労働党機関紙・労働新聞は8月22日、キム・ジョンウン(金正恩)総書記が平壌の党中央委員会本部庁舎で、朝鮮人民軍海外作戦部隊の指揮官や兵士に国家表彰を授与したと報道。記事では、党中央会館に設置された「追悼の壁」に101人の戦死者の写真と名前が掲げられている様子が伝えられた。正確な戦死者数は公表されず、この「追悼の壁」以外に別の追悼空間がある可能性も低いと見られる。

これに対し、韓国の国情院は4月30日の国会報告で、派兵された北朝鮮軍の死傷者数を戦死者約600人を含む4700人余りと推定した。北朝鮮は2024年10月に約1万1000人をロシアに派兵し、今年初めにさらに3000人以上を追加派遣、計1万5000人余りを送り込んだと推定されている。国情院はウクライナなど他国の情報機関との情報交換を通じ、交差検証を行った上で数字を提示している。

北朝鮮が公開した数が少ない理由については、前線で遺体を回収できず「失踪者」として扱っている可能性や、社会的に優遇されない階層の兵士を十分に顕彰しなかった可能性が指摘されている。また、体制の安定を重視する当局が、戦死者数を最小限にとどめることでキム・ジョンウン政権への不満を抑えようとしたとの分析もある。

韓国国家戦略研究院のムン・ソンムク統一戦略センター長は「戦死者が発生した事実自体が体制の負担になるため、数字を抑制したのだろう。戦死者を“解放の英雄”として強調し、キム・ジョンウン氏の決断による成果に仕立てることで住民の不満を最小化しようとした」と分析した。

また、北朝鮮大学院大学のキム・ドンヨプ教授は「戦死者数の正確な把握は困難であり、重要なのは派兵が実施されたという事実そのものだ。キム総書記が表彰や顕彰事業を進めるのは、党創建80周年(10月10日)や5年ぶりの党大会を控え、民心を安定させる狙いがある」と指摘した。

キム総書記は同日、「参戦軍人の功績を記録する事業を国家的事業として推進する重大措置」と発言しており、今後追加的に戦死者の身元が公開される可能性もある。韓国統一省のチャン・ユンジョン次官補は定例会見で「派兵の終結や追加戦死者の公開については予断せず、関連動向を注視する」と述べた。

(c)news1

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