
台湾有事の際、在日・在韓米軍を活用するかどうかはアメリカの判断にかかっており、日韓両国はそれに備えるべきだ――木宮正史・元東京大学教授はこう強調した。また、在韓米軍の役割が急激に拡大・縮小されないよう、対中けん制という観点からトランプ米政権を説得する必要があるとも提言した。
「イ・ジェミョン(李在明)政権は、在韓米軍が韓国にとって重要であるだけでなく、対中けん制という点でも重要だということを継続的にアメリカに訴えるべきだ。台湾有事の際、在日・在韓米軍の活用を日韓が止めることはできないだろう」
木宮氏は「トランプ政権は非常に不確実性が高い」としたうえで「在韓米軍の存在そのものや駐留経費の問題が取り上げられている現状においては、対中けん制の観点から在韓米軍の重要性をアメリカに理解させることが、駐留の維持や費用負担の抑制につながる」と強調した。
また木宮氏は次のような見解も示した。
「日本にとって最も重要な問題の一つがインド太平洋地域の安全保障だ。イ・ジェミョン政権のインド太平洋戦略がユン・ソンニョル(尹錫悦)政権の方向性を引き継ぐのか、それともムン・ジェイン(文在寅)政権の時のような戦略的曖昧さを取るのか模索している段階だとは思う。ただ、対中けん制の役割には一定程度、参加する必要がある」
トランプ政権は駐留米軍に関する防衛費や国防予算の引き上げを日韓両国に求めると予想される。この点については「トランプ大統領には、日本と韓国を競争させてアメリカの利益を最大化しようとする戦略がある。日韓両国が競い合う部分もある一方で、アメリカのこのような交渉戦略に巻き込まれてはならない」と強調した。
現在の日韓関係は非対称ではなく、もはや対称的な構造だ――木宮氏は、こう評価する。「冷戦後、日韓両国は対称的な関係となり、現在は互いを意識して競争する関係になっている。歴史問題においては妥協点を見出し、未来志向の協力関係へ進まなければならない」
その歴史問題については「国家のアイデンティティに関わる問題」だとしつつも、「経済と安全保障は生きていくための問題であり、サバイバルの問題だ。アイデンティティと経済・安全保障は両立すべきだが、何がより重要かを問うなら、“生きていくこと”ではないか」と指摘した。
そのうえで木宮氏は、日韓両国が協力すべき分野としてAI(人工知能)、サイバー、防衛海軍力を挙げた。中国がAIなど先端技術の開発を加速させている中で、日韓が競争を通じて技術水準を高め、高次元で協力すべきだという。また、日韓両国はいずれも貿易に依存する経済構造を持っていることから、海上交通路の確保に向けた連携も必要だと述べた。
(c)MONEYTODAY