2025 年 8月 19日 (火)
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[KWレポート] 「宿命のパートナー」日韓、インタビュー (上)

道下徳成・政策研究大学院大学(GRIPS)教授(c)MONEYTODAY

8月15日の光復80周年を前に、MONEYTODAYがインタビューした日本の東アジア・朝鮮半島専門家らは、アメリカと中国の覇権争いの中で日本と韓国が生き残るためには、両国の協力が不可避だと強調した。

◇日韓の安全保障協力強化で抑止力高まる

政策研究大学院大学(GRIPS)の道下徳成教授は、インド太平洋地域における最大の安全保障上の懸念は「台湾海峡」だと評価した。「台湾統一」を推進する習近平・中国国家主席が、政治的な不確実性を低減するために軍事的な危機を意図的に煽る可能性があるという。中国の軍事力増強に加え、北朝鮮が韓国に対して全面戦を仕掛ける能力がない現状を踏まえ、第2次トランプ政権下では、日米・米韓連合作戦計画の統合を進めるべきだとも主張した。

道下教授は次の点を強調した。

「日本と韓国が朝鮮半島有事に備えてそれぞれ作成した作戦計画を統合するのは困難だが、検討する価値はある。日韓両国が作戦計画の公開に慎重になるのは理解できるが、安全保障環境の変化に応じて進化させていく必要がある。韓国で、日本が作戦計画の統合を機に有事の際に自衛隊を朝鮮半島に介入させようとしている、という懸念は事実と異なる」

「日本国内では、作戦計画を統合すると多数の核兵器を保有する北朝鮮の直接的な標的になるという慎重論と、問題ないという統合論が共存している。日韓間の安全保障協力を強化すれば、抑止力が高まるだろう」

日米と米韓は、朝鮮半島有事に備えそれぞれ作戦計画「5015」「5022」および「5055」を運用している。作戦計画は、戦時に備えた戦時作戦計画と、平時の局地的挑発への対応計画の2種類に分かれ、米韓合同演習などもこれをもとに実施されている。

また道下教授は、第2次トランプ政権による「安全保障請求書」に日韓が共同で対応する必要性も提起した。

「日韓両国がトランプ政権との交渉情報を共有し、互いの交渉過程で不必要な競争を避けるべきだ。トランプ大統領の任期3年は、日韓が共に耐え抜くべき時期だ。日韓関係が悪化すれば、アメリカはそれを交渉の手段として利用するだろう」

◇日韓が共有すべき「海の危機感」

道下教授は中国の軍事的脅威に対抗するための日韓協力の必要性についても強調した。

中国は南シナ海や東シナ海で空母を動員した訓練を実施している。台湾海峡は、韓国の全物流量の40%以上が通過する海域であり、ここが封鎖されれば韓国経済にも深刻な影響が及ぶと予想されている。

「日韓両国にとって海上交通路(SLOC=Sea Lines of Communication)の維持は極めて重要だ。台湾有事の際、日本はアメリカと共に戦闘任務を遂行することになるだろう。海上交通路の確保については、韓国海軍がオーストラリアなどと連携して積極的な役割を担ってくれることを期待している」

台湾海峡をめぐる情勢について、道下教授は「習近平主席の政治的生命と台湾問題は密接に結びついている。現在の中国は経済・社会・政治の状況が不安定であり、この状況で習主席が軍事的危機を演出し、国内を結束させようとする可能性がある。中国の通常戦力と核戦力の増強も憂慮すべき状況だ」と指摘した。

(c)MONEYTODAY

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