2025 年 8月 19日 (火)
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[KWレポート] 「宿命のパートナー」日韓、トランプ時代に芽吹く新たな共闘 (2)

インタビューを受ける岡山県勝田郡奈義町の奥正親町長(c)MONEYTODAY

「少子高齢化は日韓両国が共通して直面している国家的な難題だ。両国は、成功モデルをつくって協力することができる」。地域の少子化・高齢化問題を克服しつつある岡山県勝田郡奈義町の奥正親(おく・まさちか)町長は8月7日、町役場でのMONEYTODAYとのインタビューに応じ、こう語った。

奈義町の合計特殊出生率は過去5年間、2.5人から3人の間を維持している。日本国内で出生率が高い地域のひとつだ。

ただ、2002年当時は人口減少により近隣の町との合併が議論されるほどだった。当時の投票では、住民の約70%が合併に反対する意思を示し、その後、自発的に予算を削減して少子化克服に乗り出したという。

これに注目した韓国慶尚北道は2025年7月、奈義町の出生率向上モデルを政策に取り入れることを決めた。慶尚北道は、出産から育児、中高生、大学生に至るまで、人生のあらゆる段階で経済的支援を施し、子どもを持つ家庭の負担を軽減する「奈義町モデル」を地域の特性に合わせて導入し、実行に移す計画を打ち立てた。

奥町長は「奈義町の年間予算は約40億円で、そのうち少子化対策に使われている費用はわずか1億5000万円。この少子化対策の予算は、町の合併に反対した住民たちが委員会をつくり、町議の報酬や行政経費などを削減して捻出したものだ」と振り返った。

「なぎチャイルドホーム」(c)MONEYTODAY

奈義町では、予算の削減によって高校生までの医療費を全額支援している。他地域の病院を受診した場合でも、受付窓口で「奈義町医療費支援カード」を提示すれば、病院が奈義町に費用を請求する仕組みとなっている。小・中・高の教育費支援や大学生への奨学金貸与なども実施している。

「日本でも韓国でも、低成長を克服するためには地域が自立した力を持つ必要がある。奈義町では、若者が移住し、定住することが地域のインフラ維持につながる政策といえ、それ自体が高齢者の福祉の一つでもある」

奥町長はこう強調した。

韓国ではソウル・京畿道など首都圏への人口集中と少子化問題が深刻化している。この点について、奥町長は「日本も同様の問題を抱えており、2023年には『こども家庭庁』を創設して出生率向上に力を入れている。韓国は昨年、出生率が0.75人を記録し、日本と同様に首都圏集中が進んでいるので、日韓の協力が可能だろう」と指摘する。

奈義町の高い出生率について、奥町長は「育児においては、女性が出産などを機に困難を経験するため、女性への支援政策が重要だ」と指摘したうえ「少子化とそれに伴う地域消滅の問題は国家的にも重大な課題であるため、危機感を持つことが大切だ」と訴えた。

(つづく)

(c)MONEYTODAY

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