
韓米同盟が北朝鮮抑止を超え、中国けん制や台湾海峡の安定まで役割を拡張しようとするアメリカの構想の中で、重大な転換期を迎えているとの見方が出た。
韓国の外交・安全保障シンクタンク、世宗研究所のチョ・ビヨン研究委員は、8月15日に発表した報告書「韓米同盟の転換要求と韓国型核共有の必要性」の中で、「韓国が“戦略的曖昧性”を維持することが難しい時代に突入した」と指摘。そのうえで、同盟の「現代化」議論において、戦術核の再配備と韓国型の核共有こそが、韓国の国益を確保する解決策になり得ると提言した。
チョ・ビヨン研究委員は、米国が使用する「同盟の現代化(alliance modernization)」という言葉は、単なる技術協力を超えた戦略的メッセージであり、実質的な同盟の役割変化を意味する可能性があると分析している。特に、米国防総省のウィルソン報道官が「朝鮮半島とその周辺における信頼できる抑止力確保のため、連合態勢の適応と相互運用性の深化、陸海空・サイバーを含む全領域での協力拡大」と定義したことに注目した。
実際、「同盟の現代化」という表現は過去、2003年の第35回韓米安全保障協議会(SCM)の共同声明で初めて登場したが、その当時の文脈は主に在韓米軍基地の統廃合や再配置、任務の移管、連合軍事能力の強化など、半島内に限定された再編を意味していた。
その後、2018~2022年には「包括的同盟」「未来志向の発展」などの表現が用いられ、2021年にはインド太平洋地域における平和と安定の「中核軸」としての役割が強調された。そして2024年、バイデン政権下での第56回SCMでは、再び「同盟の現代化」が登場するが、このときも主にサイバーや宇宙など新興安全保障分野での能力強化が主眼だった。
一方で、2025年に発足した第2次トランプ政権では「同盟の現代化」は在韓米軍の役割拡大と事実上の同義語として使用されており、韓米同盟の地理的範囲を朝鮮半島からインド太平洋全体にまで拡張しようとする方向性が明確になっている。
チョ・ビヨン研究委員は同盟現代化の核心争点として▽在韓米軍の戦略的柔軟性の明示▽過度な拡張への懸念▽指揮統制上の負担▽国内世論の悪化の可能性せ――を挙げた。
特に、戦略的柔軟性の政治的明示によって、在韓米軍が朝鮮半島外での任務に動員されることになれば、作戦能力の分散や国内外の反発を招き、指揮構造にも混乱をもたらす恐れがあると警鐘を鳴らした。
こうした中、チョ・ビヨン研究委員は韓国が主導権を握り、利益を確保できる選択肢として「NATO式の核共有」「ミサイル核共有」「戦術核の再配備」を提示した。
具体的には▽F-35A戦闘機を活用したNATO型の核共有(アメリカの核兵器を韓国内に配備・共同運用する方式)▽韓国の玄武ミサイルに戦術核を搭載するミサイル核共有――の2案。戦術核再配備については、北朝鮮抑止のみならず、在韓米軍司令官の地位強化や兵力維持にも資するとの評価を示した。
またチョ・ビヨン研究委員は「『同盟の現代化』という用語を無批判に受け入れるのではなく、これまで段階的に積み重ねてきた既存の表現に基づき、国内外で一貫性あるメッセージを発信することが重要だ」と主張した。
対中けん制という要素は「同盟現代化」とは切り離して別途議論すべきであり、過去の声明文の表現を踏襲する形で妥協点を見出すことが、実行力と持続可能性を高める道だと強調した。
そして「『同盟の現代化』は韓米同盟をより対等な関係へと転換させる機会とも言える」とし、韓国が自主防衛力を強化し、戦時作戦統制権を早期に転換して、北朝鮮の脅威に主体的に対応する政策転換の時期に来ていると結んだ。
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