2025 年 8月 9日 (土)
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グーグル vs 韓国政府…高精度地図を巡る「デジタル主権」攻防戦

グーグルマップでぼかし処理されたフランスの705空軍基地の様子(c)KOREA WAVE

米グーグルが韓国政府に対して高精度地図の国外搬出を再び要請したなか、安全保障や地理情報、政策の専門家は「デジタル主権と国内産業の保護の観点から許可すべきではない」と懸念の声を強めている。政府は8月11日にグーグルの要請に対する最終的な立場を発表する予定で、「グローバルな利便性」と「デジタル主権」の衝突がどのような結論を迎えるのか注目されている。

◇グーグル「経路案内のためにやむを得ない…安全保障上の問題はない」

グーグルは8月5日、自社のブログで「安全保障上の敏感施設をぼかし処理した地図データを購入する案について韓国政府と協議中だ」と明らかにし、高精度地図の搬出意思を公式に表明した。要請の対象は、縮尺1対5,000の国土地理情報院・国家基本図だ。

グーグルは「グローバルサービスの特性上、データは海外サーバーに分散・バックアップ保存される必要があり、たとえ韓国にサーバーを設置しても搬出は避けられない」とした。また「現在も1対5,000級のデータを一部活用しているが、これはPOI(関心地点)中心のため、ナビゲーションの提供には不十分だ。地図データを海外で直接処理してこそ、外国人と韓国人の両方がグーグルマップを利用する際のレイテンシー(遅延)を減らせる」と説明した。

(c)KOREA WAVE

◇専門家「経路案内は口実…未来技術の先取りが目的」

専門家は、グーグルが主張する「経路案内が目的」という説明には説得力が乏しいと指摘している。

京畿大学地理学科のチェ・ジンム教授は「縮尺1対5,000級の精密地図を保有している国は、世界でも5カ国しかない。グーグルは高精度地図がなくても東南アジア諸国で経路案内サービスを提供している」と反論した。さらに「結局は自動運転、ドローン、スマートシティなど未来の技術産業に備えるための事前作業である可能性が高い」と分析した。

ソウル女子大学情報保護学部のキム・ミョンジュ教授は、安全保障上の問題についても「単に衛星写真をぼかし処理するだけでは解決にならない。衛星写真だけであればある程度隠せるが、高精度地図が加われば建物の正確な位置を特定できるため、安全保障上の懸念が高まる」と指摘した。

グーグルマップ(c)KOREA WAVE

◇産業・安全保障の主権が損なわれる懸念…国内企業への逆差別の可能性

専門家は、特にグーグルの地図搬出が国内プラットフォーム産業に与える悪影響に警戒している。実際にフランスやオーストラリアでは、高精度地図データをグーグルに提供した後、自国の地図プラットフォームの競争力が急激に弱まった前例がある。

チェ・ジンム教授は「日本はグーグルと地図の協業をしたが、最近その協約が終了し、自前で地図を制作しない可能性が高まっている。のちにグーグルが価格を引き上げれば、従属せざるを得ない構造になる」と分析した。さらに「韓国は北朝鮮と境界線を接しているという地政学的な特殊性があり、安全保障上、より敏感にならざるを得ない」と付け加えた。

また、グーグルが国内にデータセンターを設置していないことにより、法人税の納付や規制の回避などで国内企業に比べて有利な環境にある点も指摘されている。

チェ教授は「韓国政府がグーグルに地図を渡せば、今後、国内の数値地図制作の主導権がグーグルに移る可能性がある。最終的にはデジタル主権を明け渡すことになる」と警告した。

チェ・フィヨン(崔輝永)文化体育観光相=文化体育観光省(c)KOREA WAVE

◇韓国政府「利便性より主権」…11日に最終結論

韓国政府は地図の搬出可否について慎重な立場を維持している。キム・ユンドク(金潤徳)国土交通相は人事聴聞会で「通商問題も考慮すべきだが、国防と国民の安全が優先だ」と指摘。キム・ヨンボム(金容範)大統領室政策室長も「これ以上の譲歩はない」との立場を明らかにした。

チェ・フィヨン(崔輝永)文化体育観光相もまた、「グローバルプラットフォームによる地図サービスの拡大は必要だが、高精度地図データを海外サーバーに保存するのはまったく別次元の問題だ」と述べたうえ「国家安全保障への影響を総合的に考慮しなければならない」と強調した。

(c)KOREA WAVE

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