
ChatGPT、Gemini、Claude……世界最高性能のAIモデルが既に存在する中で、韓国のネイバーやカカオなどに資源を投じてまで「韓国型AI」を開発すべきかという疑問の声が上がっている。たとえ開発に成功したとしても、性能で劣るモデルでは利用されず市場性がないという指摘もある。
こうした論調は、米国政府やビッグテック企業が主張する「すべての国家が独自にAIモデルを開発する必要はない」という論理と一致している。トランプ政権は最近発表した「AIアクションプラン」の中で、同盟国が米国のAIモデルを積極的に活用できるよう促す方針を示した。AIモデルだけでなく、AI用半導体やロボット、技術標準など“AIフルスタック”全体を同盟国に輸出する意図もにじむ。
ここで、フルスタックとは、ソフトウェア開発において、フロントエンド(ユーザーインターフェース)からバックエンド(サーバー、データベース)までを一貫して扱うスキルまたはその開発者を指す。AI分野では、モデル設計・学習・応用・インフラなど、全体を包括的に提供できる体制を意味する。
覇権競争をリードする側の主張をそのまま鵜呑みにしてよいのだろうか。
AIは単なるオペレーティングシステム(OS)とは異なる存在だ。安全保障、社会、文化、産業を包括し、特に「データ主権」という観点で自立を果たせなければ、いずれ「強者に翻弄される弱国」になりかねない。AIは国家の戦略的資産として捉える必要がある。
今後は政府機関や防衛・外交分野でもAIの導入が進むと見られており、たとえ同盟国とはいえ、依存状態が続けば国家機密や重要データが流出するリスクも否定できない。
米国が関税で他国を圧迫してきたように、将来的には「最新AIモデルのサポート制限」などを外交カードとして使ってくる可能性もある。
このような背景から、韓国型ファウンデーションモデルの確保は「自主国防」に準ずる重大課題であり、フランス・ドイツ・シンガポールなども同様の理由から独自モデルの開発に注力している。
イ・ジェミョン(李在明)政権はこの点を認識し、韓国独自のファウンデーションモデルの確保という方向性を打ち出した。
これは極めて正しい判断であり、「韓国型は不要」といった生産性のない論争はそろそろ終わりにすべきだ。米中が覇権を争う中で、永遠の味方も敵もいないという現実を忘れてはならない。【news1 キム・ミンソクICT科学部記者】
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