2025 年 8月 3日 (日)
ホーム社会韓国で続発する「高齢ドライバーによる重大事故」…「免許返納義務化」vs「移動権の保障が先」

韓国で続発する「高齢ドライバーによる重大事故」…「免許返納義務化」vs「移動権の保障が先」

2025年7月29日、京畿道楊平郡で発生した高齢ドライバーの車両突入事故現場=京畿道消防災難本部提供

韓国京畿道楊平郡(ヤンピョン)で、80代女性が運転する乗用車が住宅に突っ込み、夏休みで祖母の家を訪れていた小学生の女子児童が死亡する事故が発生した。認知機能の低下が懸念される高齢ドライバーによる運転免許の管理強化を求める声が再び高まっている。

楊平警察署によると、7月27日午後6時40分ごろ、80代の女性が運転するベンツが民家の鉄製フェンスを破り、庭に突入。庭で遊んでいた12歳の女子児童をはね、約10メートル進んだ後に家屋の1階に衝突して停車した。女子児童はその場で死亡が確認された。

被害児童は妹やいとこたちと共に夏休みを利用して祖母宅を訪れ、庭でキャンプを楽しむ準備をしていたという。加害者の女性は警察の取り調べに対し「運転ミスだった」と供述。警察は、右折時に縁石に乗り上げた後、驚いてブレーキの代わりにアクセルを踏み込んだとみている。

同様の事故は全国で相次いでいる。7月2日には江原道江陵市(カンヌン)の高速道路サービスエリアで、80代女性が運転するSUVが飲食店内に突入。利用客の30代男性と60代女性2人が重傷を負い、他に外国人女性5人ら計7人が負傷した。この事故も、アクセルとブレーキの踏み間違いが原因とされる。

韓国道路交通公団によると、2024年に発生した65歳以上の高齢ドライバーによる交通事故は4万2369件で、全体(19万6349件)の21.6%を占め、統計が開始された2005年以降で最多となった。高齢者は加齢により認知機能や反射速度が低下し、事故リスクが高まるとされる。

しかし、免許返納を進めるには現実的な課題が多い。政府は9人が死亡した「市庁駅惨事」以降、免許自主返納を促しているが、2024年の65歳以上の返納率は2.2%にとどまった。生計維持の必要性や公共交通が未整備な地域の居住者にとっては、返納が現実的でない場合が多い。

専門家は、免許返納支援の拡充とともに、アクセルとブレーキの踏み間違いを防ぐ装置の義務化が必要だと指摘する。大徳大学自動車学科のイ・ホグン教授は「韓国では免許返納に一度きり10万ウォン程度が支給されるのみで、移動権保障の観点からは不十分」と述べた。

(c)news1

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