韓国大統領選の中道野党「国民の党」候補のアン・チョルス(安哲秀)氏が、自身の遊説車両で発生した死亡事故のため、選挙運動を全面中止した。妻のキム・ミギョン氏が13日に新型コロナウイルスに感染したのに続き、公式選挙運動の初日に死亡事故まで見舞われた。野党陣営の一本化論議どころか、選挙運動の再開時期も決めることができないほど前代未聞の事態が起こり、アン候補の今後の動きが一本化の変数として浮上している。
◇遊説初日の事故
大統領選挙遊説初日の15日、国民の党の遊説車両で、一酸化炭素中毒と推定される事故により、2人が死亡、1人が重体に陥った。
忠清南道天安に停車していたアン候補遊説バスから、運転手と、「国民の党」の地域選対委員長が午後5時24分ごろ、意識不明の状態で発見され、病院に運ばれたが死亡した。同日、アン候補の江原道での遊説車両の中でも、停車中に運転手が倒れ、意識不明の状態という。事故が発生した車両は45人乗りバスで、遊説用の大型LEDスクリーンが設置されていた。
警察や雇用労働省などが16日、合同で鑑識をした結果、スクリーン作動のため、バスの荷台に設置された自家発電装置から一酸化炭素が発生し、バス内部へと広がったものと推察された。
国土交通省がアン候補の遊説バスの車両番号を照会した結果、遊説のためのLED電光板が違法に設置されたことが明らかになり、バス改造業者だけでなく「国民の党」の責任もさらに重くなるものとみられる。
◇妻の不在
アン候補の妻であり、頼もしい助っ人であるキム・ミギョン氏(ソウル大教授)が新型コロナで入院し、アン候補の情緒的な負担が大きくなったという話も出ている。
アン候補は13日の記者会見で、キム・ミギョン氏の感染判定を伝え、「正直に言って、妻には基礎疾患がある。思ったより症状がすぐれず、病院に搬送中」と伝えた。キム・ミギョン氏は肺と心臓に基礎疾患があるという。
与党「共に民主党」のイ・ジェミョン(李在明)氏、保守系野党「国民の力」のユン・ソンヨル(尹錫悦)氏の両候補がいずれも「配偶者リスク」で困惑していた際、アン候補はキム・ミギョン氏とともにボランティア活動などに取り組んできた。両候補とは違い、アン候補は配偶者の支援が期待されていただけに、アン候補から落胆ぶりがうかがえる。
◇支持率低下傾向、一本化交渉の主導権を失う
遊説車両の死亡事故で、国民の党が選挙運動を全面中断し、アン候補が提案した野党陣営の一本化議論も一時、中断の状態だ。
アン候補は、与党支持者を含む国民世論調査方式の一本化を固守しているが、「国民の力」が原則的な立場を繰り返すだけで、議論に進展がない状況だ。
アン候補は世論調査で支持が落ち込み、1桁台から抜け出せずにいる。だが統一候補になった場合、当選の可能性は高く出ている。
一方、ユン候補が世論調査での4者構図でもアン候補より有利な状況で、国民の力の一本化を急ぐ必要はないという立場だ。ユン候補がイ候補と接戦を繰り広げるなか、現状ではユン候補がアン候補を大差でリードしているためだ。
事故収拾や出棺までの日程などを考慮すると、アン候補の選挙運動再開は早くとも来週になるものとみえる。
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