2025 年 7月 23日 (水)
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登録されたばかりなのに「世界遺産が水没の危機」…韓国・岩面彫刻に迫るダムの影

ユネスコ世界遺産に登録された盤亀川の岩面彫刻=国家遺産庁提供(c)MONEYTODAY

ユネスコ世界遺産(文化遺産)に登録された韓国南東部・蔚山にある「盤亀川の岩面彫刻」が、泗淵(サヨン)ダムの影響によって損壊の危機にさらされている。このダムが満水になるたびに、岩刻画が水没する恐れがあるからだ。対応が遅れれば、せっかく得た世界遺産の地位が取り消される可能性もあり、対策を急ぐべきだとの声が高まっている。

第47回ユネスコ世界遺産委員会は7月12日、韓国で17件目となる世界遺産として「盤亀川の岩面彫刻」を登録した。ただ、委員会は登録にあたり「泗淵ダムの工事進捗状況を報告せよ」との条件を韓国政府に提示している。これを履行しない場合は「消滅の危機にある遺産」として再指定されたり、最悪の場合には登録が取り消される可能性がある。

泗淵ダムは1971年に盤亀川の岩面彫刻が発見される5年前、約4.5キロ離れた場所に建設された。全長300メートルのこのダムには水位を調整する水門がなく、満水になると盤亀台まで水が達する。韓国水資源公社の統計によると、2014年から2023年までの10年間で平均年間42日間、岩刻画が水没していた。

岩に刻むという岩刻画の特性上、水にさらされると腐食や風化が進み、表面が失われやすい。特に冬季には水が凍って岩を破壊する「凍結くさび作用」も発生するため、損壊のスピードは予想以上に早い。ある博物館関係者は「このままでは絵が完全に消えてしまう恐れもある」と警告する。

しかし、泗淵ダムは蔚山市の住民約111万人の飲用水を供給する主要な飲用水源であるため、簡単に水位を下げるわけにはいかない。

代替案として隣接する雲門ダムや亀尾の海平取水場が挙げられているが、長年にわたり議論は停滞している。2025年1月には、蔚山市と大邱市が取水地を巡って対立し、環境省が調整に乗り出す事態となった。仮に水位を調整すれば、1日6万~8万トンの水不足が発生する。

一方で、水門設置などの対策を急げば、世界遺産登録の維持だけでなく、周辺地域の他の岩刻画群と併せた世界遺産拡張登録も視野に入る。最近の研究では、盤亀川周辺にまだ発見されていない岩刻画の存在が指摘されており、今後の調査による発見が期待される。

(c)MONEYTODAY

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