2025 年 7月 19日 (土)
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李在明政権「AI主権国家」構想、カギはGPU・ソブリンAI・LLM [韓国記者コラム]

「AIグローバル協力企業懇談会」で発言を聞くイ・ジェミョン(李在明)大統領=大統領室提供(c)news1

韓国のイ・ジェミョン(李在明)政権は、人工知能(AI)分野において「自立型AIエコシステム」の構築を柱とする国家戦略を進めている。米中による技術覇権に依存しない体制を作ることが狙いだ。最近話題となっている「国家AIコンピューティングセンター」「ソブリン(Sovereign)AI」「大規模言語モデル(LLM)」は、その三本柱となる。

まず「国家AIコンピューティングセンター」は、政府が次世代GPU(グラフィック処理装置)サーバーを直接整備し、スタートアップや研究機関が費用を抑えてAIモデルを開発できるようにする国家インフラだ。政府は今後5年間で約5万枚のGPU確保を目指す。GPU市場をほぼ独占する米NVIDIAの製品は、民間企業にとって1000枚の確保も難しいというのが現状だ。

同センターは、最新のGPUを搭載したスーパーコンピューター、大容量のデータストレージ、高速ネットワークなどを備え、研究開発、人材育成なども包括する「統合型プラットフォーム」として機能する。しかし、民間パートナーの確保が難航しており、当初計画は暗礁に乗り上げている。

同センター事業は、公的資金51%・民間資金49%で特別目的会社(SPC)を設立し、総事業費4000億ウォン(約450億円)で推進される。ただ政府が過半を出資するため、民間側にとっては事業の裁量が限られる構造となっている。また、大学や研究所に低価格でサービスを提供する必要があるため、収益性への懸念も大きい。

次に「ソブリンAI」は、「AI主権」を意味する。海外に依存せず、自国でAIデータを収集・管理・運用し、独自モデルを開発・制御できる体制を指す。国家の重要機能である国防、災害対応、金融、医療などにもAIが深く関与する時代において、技術の独立性とセキュリティ確保は必須課題となっている。

このソブリンAI実現の核心が「国家代表LLM(大規模言語モデル)」の開発である。LLMとは、数十億から数兆の文書を学習して人間のように文を理解・生成できるAIのこと。要約、翻訳、コーディング、検索など、多くの生成型AIサービスがLLMを基盤として動作する。

代表的なLLMには、オープンAIの「GPT」、グーグルの「Gemini」、メタの「LLaMA」、韓国・ネイバーの「ハイパークローバX」などがある。

韓国政府は、公的なLLMを育成するため、官民共同での開発体制を構築。国家AIファンドやAIコンピューティングセンターを通じ、インフラ、データ、モデルの3要素を一体的に強化する。

とはいえ、先端コンピューティング資源の確保や人材育成、技術の内製化には巨額の投資と長期的な時間が必要であり、一企業の努力では世界との競争に対応できない。イ・ジェミョン大統領は、韓国版AGI(汎用人工知能)を視野に入れた「AI高速道路」の整備を国家事業として主導する意向を示している。

今後の鍵は、AI戦略の実行力と民間との連携の度合いにかかっている。【news1 ソン・オムジ記者】

(c)news1

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