
韓国を訪れる外国人観光客が直面する決済の障壁が深刻化している。配達アプリや交通カード、モバイル決済、キオスク(無人注文機)などのデジタルインフラが「韓国人向け」に設計されており、外国人が自由にサービスを利用できない構造的問題が浮き彫りとなっている。
VISAによると、2024年に韓国を訪れた外国人のうち、自国カードで公共交通を利用したのはわずか1~5%。配達アプリも韓国語のみ対応が多く、海外カードが使えず、電話番号認証も壁となる。「配達の民族」は海外カード決済に対応し始めたが、言語や住所入力の問題が依然として残る。ヨギヨやクーパンイーツも外国人には使いにくい仕様が続く。
交通ICカードのT-moneyは海外カードでのチャージができず、iPhoneではモバイル版も使えない。券売機も多くが海外カード非対応で、現地で切符を買えず困る観光客が多い。バスや鉄道予約での認証エラーや券売機探しでの待機など、苦情が観光公社に相次いでいる。
韓国政府は観光交通官民協議体を設け、多言語対応や決済手段の多様化を進める方針を掲げるが、進展は限定的だ。非接触決済でも世界の潮流から後れを取り、EMV方式端末の普及が遅れ、Apple PayやGoogle Payが使えない店も少なくない。QRコード決済も普及は限定的で、全国インフラ整備は初期段階にとどまっている。
背景には、高い手数料に対応できない中小事業者の事情があり、「海外カード拒否」が常態化。専門家は「外国人を国内消費者と見なす意識改革と、グローバル顧客前提の設計が必要」と強調する。ステーブルコインなど新たな決済手段への対応も求められており、韓国が「観光強国」を目指す以上、インフラ再設計は喫緊の課題だ。
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