
世界の化学業界が「脱炭素」「循環型経済」への転換を加速させている。赤字が続く中でも、各社が連携してリスクを背負いながらも取り組んでいるのが、自動車プラスチックの再資源化だ。背景にあるのは、2030年には約163兆ウォン(約18兆円)規模に達するとされるグローバルなプラスチック再生市場への期待である。
ドイツ・ルートヴィヒスハーフェンにある世界最大の化学メーカー「BASF(ビーエーエスエフ)」の本社に6月10日、化学業界のカーボンニュートラルCEOイニシアチブ「グローバル・インパクト連合(GIC)」の会議に出席する約50人が集結した。GICは韓国LG化学、日本の住友化学、三菱化学、SABIC、Clariant、Siemens Energyなど、年商計473兆ウォン規模のグローバル企業が加盟する組織で、特に自動車プラスチックの循環利用を柱とした共同プロジェクトを進めている。
GICの目的は単なる再生材製造にとどまらず、持続可能で商業的に成り立つエコシステムの確立にある。現在、欧州においてELV(使用済自動車)のバンパーやギア、シートに使われたプラスチックの分別と高品質素材への再生を目指した実証実験が進められている。
同11日には、ケルン近郊プルハイムにある分別処理企業「Steinert」での作業現場も公開された。自動車から取り出した廃プラスチックが巨大な自動選別機を経て、PE(ポリエチレン)やPP(ポリプロピレン)など19種類に分けられ、8月にはLG化学やBASF、三菱化学などGIC加盟8社に供給される。
GICの狙いは、年間80万トン超とされる欧州の廃車由来プラスチックの再利用率を、現在の20%から80%へと引き上げることにある。これは単なる環境活動にとどまらず、将来的には車体構造やデザインにも影響を与える可能性がある。
LG化学の担当者は「今後は自動車メーカーが車の設計段階で、リサイクルを想定した化学素材や構造の提案を化学企業が担うことも現実的だ」と語った。また「競合企業が一堂に会し、分別・回収・再利用の全工程を連携しながら自動化し、持続可能な流れを作ることがポイントだ」とも述べた。
GICへの参加は、欧州連合(EU)による厳格なELV規制への対応という実利的な側面もある。中国からの低価格製品の流入によって、既存の化学製品では利益確保が難しくなる中、LG化学など韓国企業も電池材料や新薬と並ぶ「3大成長軸」の一つとして、グリーン素材への投資を強化している。
GICのチャーリー・タン最高経営責任者(CEO)は「プラスチック再生の方法を進化させ、まずは欧州で、いずれはグローバル市場へ広げる」と述べた。
市場が不確実で不況が続くなかでも、脱炭素社会への転換と循環経済の構築に背を向けるわけにはいかない。これが世界の化学業界が「赤字でもやらざるを得ない」と判断する理由だ。
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